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大阪府大東市が国内で初めて、市営団地の建て替えを民間主導の公民連携型で進めた。補助金は投入せず、住宅以外の機能と一体で事業を構築。“自走”できる運営を目指す。事業遂行は、「エージェント」に委ねた。

 大阪都市圏のベッドタウンとして発展してきた大東市の北条で3月、「morineki(もりねき)」がまち開きを迎えた。市営団地を建て替えた、木造低層の共同住宅6棟が並ぶ。他に、芝生公園や北欧のライフスタイルをテーマとする店舗、オフィスなどが合計約1ヘクタールの敷地の中に一体で計画されている〔写真12〕。

〔写真1〕「全戸借り上げ」からスタート
〔写真1〕「全戸借り上げ」からスタート
「もりねき住宅」の中庭。6棟の住宅棟が囲む。現在は全74戸が借り上げ市営住宅。建て替え前の80世帯のうち60世帯が戻り、残り14世帯では若返りが図られている(写真:生田 将人)
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〔写真2〕木造低層の住宅棟が並ぶ
(写真:生田 将人)
(写真:生田 将人)
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(写真:生田 将人)
(写真:生田 将人)
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(写真:生田 将人)
(写真:生田 将人)
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建て替えに伴い、総戸数を6棟合計74戸に半減させた。元の団地とは打って変わり、木造低層の建物群が並ぶ

 morinekiをスタート地点に、市内のまちづくりを担う役割として2016年に生まれたのが大東公民連携まちづくり事業(coomin(コーミン))だ。市も出資する株式会社で、「PPP(公民連携)エージェント」として活動する。

 今回の建て替えは、coominが設立した特定目的会社(SPC)「東心」が担当し、建物を所有・運営する。市は借り上げ公営住宅として建物を利用し、実需を見極めながら戸数を減らすか維持するかを決めていける。

 その過程で、余剰の住戸は家賃補助のない民間賃貸(民賃)に転換する。築古になっても入居希望者が現れるよう、建物の維持管理以外に、暮らしの基本となるエリアの魅力を高める努力が必須になる〔図1〕。PPPエージェントの腕の振るいどころだ。

〔図1〕借り上げから段階的に民賃に転換
〔図1〕借り上げから段階的に民賃に転換
今回の建て替え事業を自治体から見ると、「需要に対応して借り上げ分を調節可能で、負の遺産にならずに済む」とcoominの入江氏は説明する。代わりに、やがて新築でなくなってもエリアの価値が毀損されないようなまちづくりが求められる(資料:coomin提供資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
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公民連携方式の“のれん分け”

 郊外都市の例に漏れず人口減少と高齢化に悩む大東市では、老朽化した市営住宅の扱いが課題となっている。「個別の施設で考えず、民有地も合わせてエリア単位で発展させる発想が必要だ」。東坂浩一市長がそう考えたのが、公民連携プロジェクトの発端だ。

 対象となった144戸の「飯盛園第二住宅」には、15年時点で80世帯が残っていた。耐震性の問題などがあり、新たな住宅の供給を検討するも、財源に余裕がない。

 そうした中、岩手県紫波町における公民連携まちづくり「オガールプロジェクト」が、見込みのある自治体にPPPエージェント方式の“のれん分け”を呼び掛け始めていた。12年に第1期の施設を完成させたオガールでは、複数のまちづくり会社で代表を務める岡崎正信氏がPPPエージェント方式を確立。全国に名を知られるようになった。

 これに志願したのが大東市の建築技師だった入江智子氏。紫波町に9カ月間移り住み、まちづくり会社で実地研修を受けた。並行し、市がアドバイザリー契約を結ぶ公民連携事業機構(東京都品川区)の教育プログラムも受講。研修終了後、coominの代表取締役に就任した。