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コロナ禍や、SDGs(持続可能な開発目標)の機運の高まりを受けて、大手企業が次々と団地再生に参入している。事業性を確保しつつ、高齢化や利便性の悪さなどの弱点をいかに克服するか。各社の挑戦が始まった。

大和ハウス工業
戸建て住宅団地の再生にかじ

 住宅を売り切るビジネスタイプから脱却する──。国内最大級のハウスメーカーである大和ハウス工業は、芳井敬一社長の号令の下、郊外住宅団地の再生を目的とした専門部署を2021年4月に立ち上げた。

 同社は1962年~99年にかけて「ネオポリス」と呼ぶ戸建て住宅団地を各地で開発した。現在、全国に61団地ある。開発面積の合計は約3114ヘクタール、開発区画は合計6万7884区画に及ぶ〔図1〕。初弾として、全国にある8団地を対象に、団地再生に取り組み、その後、全国展開を目指す。

〔図1〕全国のネオポリス再生に動き出す
〔図1〕全国のネオポリス再生に動き出す
リブネスタウンプロジェクトの初弾として、上郷ネオポリスや緑が丘ネオポリスなど8団地を対象に団地再生に取り組む。8団地は図で赤字で示した。大和ハウス工業は1962年から99年にかけて、戸建て住宅団地「ネオポリス」を全国で開発した。街をつくった責任として、ネオポリスに新たな魅力を創出することを目的に「リブネスタウンプロジェクト」を2019年に立ち上げた。21年4月に新設した専門部署が中心になって同プロジェクトを進める(資料:大和ハウス工業の資料を基に日経アーキテクチュアが作成、写真:2点とも大和ハウス工業)
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 一企業が、これほど大規模な戸建て団地の再生を目指す動きは類を見ない。大きくかじを切った背景には、SDGsの社会的要請がある。17の目標があるうち、「11 住み続けられるまちづくりを」「12 つくる責任 つかう責任」の2つに団地再生は位置付けられると判断。「サステナビリティレポート2021」の中で芳井社長は、「開発者として持続可能な街にしていく責任がある」とコメントしている。

経済的に回る仕組みを整備

 団地再生の専門部署である、リブネスタウン事業推進部西日本統括グループの脇濱直樹グループ長は「今後、郊外住宅団地の価値は見直される」と断言する。緑が多く、インフラも整っているという団地独特の魅力は、コロナ禍で変化した社会ニーズにマッチすると考えるからだ。

 とはいえ、開発から長年経過した分譲戸建て団地の再生は一筋縄ではいかない。管理主体が明確でなく、資金となる管理費を新たに集めたり、住民の足並みをそろえたりすることも容易でないからだ。

 大和ハウス工業が街づくりを進める役割を担うことも一手ではあるが、脇濱グループ長は「根本的な解決にはならない」と説明する。いかに企業のビジネス的な視点を入れつつ、街や住民自体で回せる仕組みを構築するか。そこに成否がかかっている。

 例えば宅配や家事支援など民間のサービス事業者が団地で突然ビジネスを始めても、個々の住民に営業をかけることは至難の業だ。そこでまずは住民が会費を払い、運営を補助するプラットフォーム「団地OS」を団地内に組織する。その運営組織と民間サービス事業が契約することで、事業者も住民も安定的にサービスを継続できるという仕組みだ。

 大和ハウス工業はこれを、兵庫県三木市にある「緑が丘ネオポリス」で実践している〔図2〕。同団地は同社が初めて単独で開発した大規模団地。1971年に入居が始まり、3期に分けて開発・販売した。

〔図2〕住み継ぎ促進で若年層の流入を狙う
〔図2〕住み継ぎ促進で若年層の流入を狙う
3期にわたって開発した緑が丘ネオポリス。1期と2期に開発した緑が丘地区は高齢化の進行が深刻だ。大和ハウス工業は、住民が足並みをそろえて街を管理できる仕組みや、住み継ぎを促進させる仕組みを整えて、持続可能な街の構築を目指す(資料:大和ハウス工業の資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
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