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入居者がいる賃貸住宅団地では、移転交渉などが煩雑で改修や建て替えが進みにくい現実がある。2021年にBELCA賞ベストリフォーム部門を受賞した「アンレーベ横浜星川」は、住み続けながらの刷新を実現した。

 横浜市の住宅街に立つ「アンレーベ横浜星川」は、1954年竣工の旧桜ヶ丘共同住宅を一棟丸ごと改修した賃貸住宅団地だ〔写真1〕。地上4階建てで、鉄筋コンクリート造。以前は全32戸のうち10戸空室だったが、改修後はほぼ満室だ。

〔写真1〕新築さながらの外観が好評
〔写真1〕新築さながらの外観が好評
横浜市に立つ築60年超の「アンレーベ横浜星川」。写真は、改修後の北西側外観。新築のようだと近所に住む人々からも評判だ(写真:神奈川県住宅供給公社)
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 建物は神奈川県住宅供給公社(横浜市)が所有・管理している。馬淵建設(横浜市)が改修の設計と施工を担い、2019年2月に完成した。

 同公社が重視したのは、住民を棟内移転させて住み続けてもらいながら全戸の工事を進めること。通常、建て替えるには、住民に移転してもらうための交渉が必要となる。棟内移転でそうした手続きをなくし、事業期間を約2年短縮。約11カ月間の工期で済んだ。同公社賃貸事業部設計監理課の上田憲治係長は、「住民が住まいながらの工事は事業的に大きなポイントだった」と説明する。

 改修内容は住民が3つのプランを選択できる方式とした。その3つとは、(1)家賃は変わらず、移転も必要ない。断熱性向上などの室内工事を行う必須リノベ、(2)家賃を1500円上乗せし、設備改修だけでなく和室を洋室化する部分リノベ、(3)家賃を1万5000円上乗せし、スケルトン化して間取りを一新するフルリノベだ。

 結果的に、9戸が必須リノベ、4戸が部分リノベ、9戸がフルリノベを選択した。各戸それぞれの家計事情や要望に寄り沿う、“住民優先”な提案といえる。