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長年研究され、建て替えや転用を促すべく国も規制緩和を行ってきた団地問題。より条件の厳しい団地が残り、再生への方策は難度が高まっている。今後の課題について、都市計画や団地再生の実情に詳しい、3人の識者に聞いた。

 研究者に聞く 
饗庭 伸氏 東京都立大学都市環境学部都市政策科学科 教授
戦略性に欠いた団地売却

(写真:本人提供)
(写真:本人提供)

 2006年施行の住生活基本法により、住宅整備はその大半を市場に任せ、セーフティーネットの部分は主に公的主体が担うように分けられた。私はそれが役割を分け過ぎたのではないかと考えている。

 交通の便がいい団地など、割と条件の良い場所だけが民間に売り払われ、これまでに公的住宅団地の数がかなり絞られてしまった。結果、遠方の団地ばかりが残り、公的主体が頭を抱える構図となっている。

 もしもあらかじめ公的資産を売却するときの戦略を立て、条件の良い団地と悪い団地を抱き合わせにして民間に売却し、民間が創意工夫で両方の団地を再生していたらどうなったか。あるいは、民間が団地をタワーマンションに建て替える際、一部に住宅困窮者向けの住宅整備を条件とすることもできたかもしれない。

 一方、デベロッパーやハウスメーカーも、自社が開発してきた宅地の状況を見直してもらいたい。販売当時は中流階級をターゲットとしていても、数十年の間に様々なライフイベントを経て、セーフティーネットで救わなければならない層に変わる可能性がある。供給してきた企業が社会的使命として、管理費を集め、生活困窮者の救済に充てるといった対策を講じる必要が出る可能性もある。

「立適」の団地外しは再考を

 ニュータウンなど大規模な団地は、基本的にインフラや建物の配置計画が整っており、それ自体が、国が推進するコンパクトシティーを体現している。バブル期の開発であればなおさら、結構いいスペックの住宅が立ち並ぶ。

 私は都市計画の専門家として、複数の自治体で立地適正化計画の作成に助言してきた。その中で、せっかくのニュータウンを、計画から外している自治体が少なからずあった。それがあえてなのか、考えなしなのかは分からない。

 だがその大きな要因として、各自治体が富山市の成功例に引っ張られ過ぎたのではないかと考えている。同市は10年以上かけて、次世代型路面電車(LRT)の整備などと連動する形で街の機能を中心地に集中させ、人口増に転じるなどの成果を収めた。それを他の自治体が参考にしたとき、電車などの公共交通機関を中心に街を計画しなくてはならないという固定概念を生んでしまった。

 立地適正化計画制度は14年施行の改正都市再生特別措置法により創設された。作成した計画は何度更新しても構わないのだから、インフラなどのポテンシャルを持つ団地やニュータウンを活用することを各都市で今からでも考慮すべきだ。(談)