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建設会社のDX(デジタルトランスフォーメーション)が熱を帯びている。経済産業省などから「DX銘柄2021」に選定された清水建設は「デジタルゼネコン」への脱皮を掲げ、現場や設計業務などの改革を始めた。

 高さ日本一を目指して工事が進む虎ノ門・麻布台プロジェクトのメインタワー(A街区)。完成すると高さ約325m、延べ面積約46万m2にもなるビルの建設現場は、施工者の清水建設にとって、デジタルを活用したものづくりの最前線だ〔写真1〕。

〔写真1〕清水建設は虎ノ門・麻布台プロジェクトの現場などでデジタル化を進めている
〔写真1〕清水建設は虎ノ門・麻布台プロジェクトの現場などでデジタル化を進めている
上は「虎ノ門・麻布台プロジェクト」の現場に設けた統合監視室。55インチのディスプレーを33台も並べ、現場の映像やデータを映し出す。左下は「SmartStation」と呼ぶ端末。中央下はRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)による間接業務の自動化。右下はBIMデータを基に構築した都市のデジタルツイン(写真・資料:清水建設、オートデスク)
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 現場のデジタル化を象徴する存在が、「SmartStation」と呼ぶ新開発の端末。計127台も配備する。現場の分電盤の点検作業を効率化するため、電力量を遠隔監視しようと考えたのが開発のきっかけだった。

 スマート化した分電盤に、現場のWi-Fi環境の構築や360度カメラによる監視などの機能を追加。さらにはタッチパネル式のディスプレーを搭載し、工程表や図面を閲覧したり、当日の作業内容や資材の搬入・揚重状況などを確認したりできる機能を持たせた。ウェブ会議にも使える。

 現場全体にWi-Fi網を構築できるので、自動搬送ロボットの自律運行などにも役立つ。写真や動画を高精細・低遅延で送受信できるので、デジタルを活用した施工管理をストレスなく導入可能だ。

 清水建設は中期デジタル戦略2020で、「リアルなものづくりの知恵と先端デジタル技術により、ものづくりをデジタルで行い、リアルな空間とデジタルな空間・サービスを提供する建設会社」を、デジタルゼネコンと定義。目指すべき姿と位置付けた。

 同社の取り組みは、現場のデジタル化や建設ロボットの開発、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の活用に限らない。都市や建物のデジタルツイン(現実空間のデータを取得し、仮想空間に再現すること)を構築し、ビル運営や顧客の資産管理に役立てる試みも始めた。

 デジタル技術によって業務プロセスやビジネスモデル、企業風土などを変革するDX。清水建設に限らず、多くの建設会社が関心を寄せる。日経アーキテクチュア調査では、建設会社78社のうち約62%が「すでに取り組んでいる」と回答。「取り組む予定がある」「今後取り組みたい」を合わせると約96%に上る熱狂ぶりだ 「ゼネコン熱狂、建設DX」参照

 DXの裏付けとなる研究開発費を積み増す企業も多い。日経アーキテクチュア調査では、20年度の研究開発費上位15社のうち11社が、21年度に開発費を増額すると回答した〔図1〕。

〔図1〕2021年度も研究開発費を積み増す建設会社が多数
〔図1〕2021年度も研究開発費を積み増す建設会社が多数
日経アーキテクチュア調査に回答した建設会社の2020年度の研究開発費(単体)を多い順に15位まで並べた。金額は建築だけでなく土木なども含めた合計額。図中の「─」は無回答。カッコ内の矢印は、20年度よりも21年度が多い場合に↑、少ない場合に↓とした。週休2日の達成率は建築の現場の値(資料:日経アーキテクチュア)
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 こうした傾向は今後も続きそうだ。鹿島は21年5月に発表した23年度までの中期経営計画のなかで、研究開発やデジタルに今後3年間で550億円を投資すると明らかにしている。