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外壁タイルの浮き・剥落を巡る紛争が後を絶たない。紛争の場面で度々登場するのが、浮いた面積の割合を示した「浮き率」だ。浮き率を根拠に、新築時の施工会社が補修費用の負担を迫られるケースが増えている。

 外壁タイルにテープが張られ、タイルが浮いた箇所にチョークで印が付けられている〔写真1〕。2021年7月に大規模修繕工事が完了した10階建てのマンションの工事前の姿だ。

紛争1
〔写真1〕外壁タイル全体で15%の浮き率
〔写真1〕外壁タイル全体で15%の浮き率
西側の外壁。テープで囲った範囲内のタイルに浮きが発生している(写真:取材先の提供)
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共用廊下。浮き率は外壁タイル全体で15%に達していた(写真:取材先の提供)
共用廊下。浮き率は外壁タイル全体で15%に達していた(写真:取材先の提供)
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 08年に竣工したこのマンションで最初にタイルの浮きが見つかったのは、築7年目だった。

 施工会社は浮きの原因について、「東日本大震災で雑壁と主要な構造部が接触してタイルの接着力が低下し、経年で進行した」と説明。施工不良を否定した。その上で、浮いたタイルの補修費用を施工会社と管理組合で折半する案を提示。管理組合はこれを受け入れた。

 その1年半後、補修工事をした南面の別の箇所で、再びタイルの浮きが見つかった。施工会社は南面の新たに浮いた部分だけを補修する見積書を作成し、その5割の費用負担を管理組合に求めた。

 管理組合はこれを承諾せず、マンションの設計とコンサルタント事業を手掛ける翔設計(東京都渋谷区)に支援を頼んだ。

 翔設計が浮きの原因として疑った1つは、コンクリート表面に施す下地処理の不良だ。張り付けモルタルの付着力を高めるために表面に凹凸を付ける目荒らしを、椀型の研磨道具を用いるカップ掛けで行っていたからだ。日本建築学会が発行する「建築工事標準仕様書・同解説JASS19陶磁器質タイル張り工事」に例示されていない方法だ。

 翔設計の技術的支援を得た管理組合は、南面以外も浮いている可能性があるとして、施工会社の費用負担で全ての外壁タイルの打診調査を行うことを要求。その調査で、外壁全体での浮き率が15%、南面が25%と判明した。

 施工会社は施工不良を否定する姿勢を崩さなかったが、経年浮き率を0.6%/年として、築年数を乗じた経年劣化分を算定。それを超える浮きは全額負担するとして、補修費用の約6割の負担を提案した。

 管理組合は、大規模修繕工事を発注する見返りとして、施工会社の負担分を8割に増やすよう要求。施工会社はそれに合意して決着した。大規模修繕の見積もり確認と設計・監理は、翔設計が管理組合の依頼で引き受けた。

 この事例のように、外壁タイルの浮きを補修する費用負担を巡って、管理組合と元施工会社が対立するケースが増えている。