全1882文字
PR

外壁タイルの紛争で注目を集める「浮き率」。瑕疵(かし)を巡る訴訟では、浮き率を根拠に施工不良を推認する判決が出ていた。和解の現場では、管理組合と建築事業者の費用負担を決める際に浮き率が使われている。

 外壁タイルの浮き・剥落を巡る紛争は、裁判での解決が難しいと言われる。浮き・剥落の発生原因と施工不良の特定が困難なケースが多いからだ。そうした状況に一石を投じる判決が、大阪地方裁判所で2018年2月14日に下された。発生原因を特定せず、浮き率で施工不良があると推認。原告の元請け施工会社の訴えを一部認め、被告の下請けタイル工事会社に損害賠償金約410万円の支払いを命じた〔図1〕。

〔図1〕6年足らずで3%以上は容認されない
〔図1〕6年足らずで3%以上は容認されない
タイルが浮いた原因を特定せずに浮き率で施工不良を推認し、被告である下請け施工会社の重過失を認めた判決文の一部(資料:判決文を基に日経アーキテクチュアが作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 訴訟の舞台となったのは、モルタル下地張りでタイルを施工した鉄筋コンクリート造の事務所ビル。築5年8カ月目に大量の浮きが発覚した〔写真1〕。裁判官は下請けが生じさせた浮き率を7.4%と認定した。

〔写真1〕浮き率で施工不良が推認された事務所ビル
〔写真1〕浮き率で施工不良が推認された事務所ビル
2007年3月に竣工したRC造の事務所ビルで、引き渡しから5年8カ月たって見つかった外壁タイルの浮き。胡桃設計が原告である元請けの施工会社を支援した。裁判官は下地モルタルと張り付けモルタルの界面での浮きを下請けの瑕疵、躯体と下地モルタルの界面での浮きを元請けの瑕疵とした(写真:胡桃設計)
[画像のクリックで拡大表示]

 判決を言い渡した高嶋卓裁判官は、法曹専門誌の判例タイムズ17年9月号に、外壁タイルの施工不良の判定目安を提案していた。浮き・剥落率が「施工後5年超10年以内に3%以上」「施工後10年超15年以内に5%以上」発生していたら、施工不良ありと推認するものだ。大阪地裁に所属する民事調停委員21人の意見を基に作成した〔図2〕。

〔図2〕施工不良を推認するタイルの浮き・剥落率
〔図2〕施工不良を推認するタイルの浮き・剥落率
高嶋卓裁判官が提案した施工不良の判定目安。現場で確認された外壁タイルの浮き率が表中の割合以上だと、施工不良があると推認する。判例タイムズの2017年9月号に掲載した(資料:日経アーキテクチュア)
[画像のクリックで拡大表示]

 建築紛争を多く手掛ける匠総合法律事務所の秋野卓生弁護士は高嶋裁判官の論文の影響を次のように語る。「管理組合からこの主張が出てきたとき、施工会社は施工不良がないと反論できる証拠をしっかり示せないと、裁判官に浮き率だけで施工不良と判断されかねない」。浮き率が一定の値を超えれば施工不良を推認するという判決が一般化すると、紛争への影響は大きい。