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日本のモダニズム建築を代表する校舎群の老朽化が目立つなか、大学自らがその価値を再認識し、大規模な改修を実施。歴史に裏打ちされた価値を魅力として発信し、最新の教育環境を備えた校舎群に再生した。

 名古屋市にある南山大学が4年がかりで進めてきたキャンパスの大改修事業が2021年5月に完了した。改修の対象は、日本のモダニズム建築をけん引した米国の建築家、アントニン・レーモンド(1888-1976年)が設計した校舎群だ。

 そのうちの1棟が、キャンパスの顔とも言える「G30教室棟」。5つのボールト屋根を並べてつくった扇形平面の大空間に、約350席の階段教室が入る。汚れの目立った建物が、外壁補修やサッシ交換などの大掛かりな改修により、1964年の竣工当初を想起させる姿を取り戻した〔写真1〕。

〔写真1〕オリジナルの姿で再生
〔写真1〕オリジナルの姿で再生
5つのボールトが並ぶ屋根が特徴的なR30教室棟の改修前後。コンクリートの補修や、サッシの交換などで、オリジナルの外観を残しつつ再生した(写真:車田 保)
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(写真:南山大学)
(写真:南山大学)
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一時は高層棟建て替え案も

 64年のキャンパス開設時に8棟だった校舎は、その後、レーモンドが73年に離日するまでに、本人の設計による5棟が増築された。緩やかな丘陵地の地形を生かしたキャンパス計画は、環境建築の先駆けとも言われ、65年に日本建築学会賞(作品)を受賞した。2011年に、現在のR棟に建て替えられた「学生会館」を除く12棟が現存する。

 「耐震補強をはじめとする改修を重ねてきたが、老朽化が目立ち、使い勝手も悪かった。一時はG30教室棟などを高層棟に建て替える案も出たが、議論を詰めるうちに、その価値を見直し、資産としてきちんと残そうという結論に至った」。大学を運営する学校法人南山学園事務局大学本部長の福田尚登氏はそう説明する。

 レーモンド・リノベーション・プロジェクト──。それらの校舎群を中心に、17年に着手したキャンパスの大改修事業を、大学ではそう命名して、その内容や意義を内外に広くアピールしてきた。