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地盤や基礎に苦手意識を持つ建築設計者は多い。一般社団法人基礎構造研究会で建築基礎設計士試験の運営などを担う安井建築設計事務所の松尾雅夫技師長に、設計者、特に若手が地盤と向き合う際の心得を聞いた。

 社内や日本建築学会基礎構造部会の講習会などで、若手設計者に基礎設計のポイントを伝える機会が多い。その際に感じるのは、上部構造の設計は得意でも、地盤や基礎設計に対しては苦手意識を持っている設計者が多いことだ。大学の建築学科に地盤工学や基礎工学の講義が少ないことが影響しているのだろう。

 そうは言っても、米国のように基礎構造を専門とする資格がない日本では、1級・2級建築士や構造設計1級建築士が自ら設計し、その内容に問題がないか確認することが求められており、責任は重大だ。

 地盤の性能に応じて適切に基礎を設計しなければ、建物が沈下して壊れるなど、取り返しのつかない被害につながる。沈下による被害を防ぐためには、地盤の成り立ちのような基本的な事項を十分に理解しておくことが欠かせない。

 基礎設計を苦手とする設計者のなかには、地盤の成り立ちを理解していない人がいる。長い年月の間に河川などによって運ばれた土砂が堆積してできた地層のうち、古くから堆積する「洪積層」は支持力が大きくて沈下が起こりにくい。一方、新しい時期に堆積した「沖積層」は軟弱で、建物を建てると沈下が生じるというようなことは当然の知識として身に付けておかなければならないのだが〔図1〕。

〔図1〕まずは地盤の成り立ちを知る
〔図1〕まずは地盤の成り立ちを知る
堆積年数が浅い沖積層は未固結で軟弱だ。重い構造物を載せると大きな沈下が生じたり、地震による液状化が問題になったりする(資料:松尾 雅夫)
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 深さだけでなく、場所によっても沈下のメカニズムや土質が異なる。基本を押さえたうえで、こうした地盤の特性を理解しなければ、地盤調査を実施しても正しく調査できているかどうかを判断できない。

 また、ボーリング調査だけでは土の密度が分からないので室内土質試験の実施を検討するといったふうに、地盤調査の結果を検証して試験を追加することがあるため、データの見方を把握しておくことも重要だ〔図2〕。地盤調査の結果や解析を踏まえて基礎形式を決定する際には、沈下計算を実施し、必要な対策を講じることも必要だ。しかし、沈下計算は複雑で、ここでつまずく人が多い。

〔図2〕SWS試験だけでは地盤を見抜けない場合もある
〔図2〕SWS試験だけでは地盤を見抜けない場合もある
地盤調査の一般的な流れ。構造計算の審査が免除されている4号建築物でも、場合によってはボーリング調査を実施することが望ましい(資料:松尾 雅夫)
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