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地震や豪雨で崩れる恐れのある擁壁は全国に多くある。2021年6月には、大阪・西成で擁壁が崩れ、住宅が崖下に落ちる事故も発生した。建物の更新時は擁壁の安全性を高めるチャンスだが、対策は進んでいない。

 我が家や近所の擁壁は、果たして安全なのか──。一般市民が不安を覚えるには十分すぎるインパクトを持つ事故が2021年6月25日、大阪市西成区で発生した。古い空石積み擁壁(コンクリートで固めずに石を積んで構築した擁壁)が崩壊し、2棟の住宅が崖下に崩落したのだ〔写真1〕。

〔写真1〕急傾斜の空石積み擁壁が崩壊
大阪市西成区で発生した住宅崩落事故の現場。崖下がサービス付き高齢者向け住宅の建設現場。2021年6月26日に撮影(写真:日経クロステック)
大阪市西成区で発生した住宅崩落事故の現場。崖下がサービス付き高齢者向け住宅の建設現場。2021年6月26日に撮影(写真:日経クロステック)
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住宅が落ちる直前の様子(写真:住民提供)
住宅が落ちる直前の様子(写真:住民提供)
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 地盤の専門家からは、擁壁の裏込め土が流出して空洞ができ、擁壁の上部が座屈したのではないかとの指摘が上がっている。隣の敷地で進められていたサービス付き高齢者向け住宅の新築工事による振動の影響を指摘する声も多いものの、原因はいまだ特定されていない〔図1〕。

〔図1〕裏込め土の流出で擁壁上部が座屈したか?
太田ジオリサーチの太田英将相談役が推定した崩落のメカニズム(資料:太田ジオリサーチ)
太田ジオリサーチの太田英将相談役が推定した崩落のメカニズム(資料:太田ジオリサーチ)
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破損した水道管。崩落前にも水漏れが確認されている(写真:日経アーキテクチュア)
破損した水道管。崩落前にも水漏れが確認されている(写真:日経アーキテクチュア)
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 宅地の擁壁は、大地震のたびに被害を受け、避難や救助の妨げとなってきた。16年の熊本地震では、熊本県内で約2800カ所の擁壁が被災。被害が大きかった益城(ましき)町では宅地の復旧に2年以上も要し、地域の復興の足かせになった。

 大雨による擁壁の被害も見逃せない。台風や集中豪雨は気候変動の影響で激甚化が懸念されており、そのリスクは一層、高まる恐れがある。