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頻発する豪雨水害から建物を守るため、水害対策に役立つ建材・設備の注目度が高まっている。そこで日経アーキテクチュアは、建物内への浸水・漏水を防ぐ、雨水を迅速に処理する、ぬれても再利用できるといった性能を備えた新製品をピックアップした。開発中の注目製品も併せて伝える。

 止水板 
BX止水板ラクセットSDタイプ 文化シヤッター

室内側からドアにはめ込んで止水確保

 豪雨による建物内への水の浸入を防ぐために、開口部に設ける止水板の需要が増している。利用者の期待する浸水防止性能や設置方法、価格帯など、ニーズの広がりに合わせた製品の開発が活発だ。

 文化シヤッターが2021年8月に発売した「BX止水板ラクセットSDタイプ」は、外開きのスチール製ドアに後付けできるのが特徴だ〔写真1、2〕。

〔写真1〕浸水深850mmまで止水
〔写真1〕浸水深850mmまで止水
既存のスチールドアにBX止水板ラクセットSDタイプを設置して、浸水防止性能を確認している様子。浸水深850mmまで止水できる(写真:文化シヤッター)
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〔写真2〕ドアの室内側に設置
〔写真2〕ドアの室内側に設置
既存のスチールドアにこの製品を設置した様子。取り付け位置がドアの室内側なので、設置後もドアを開閉できる。対応できるドア幅は400~2000mm(写真:文化シヤッター)
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 従来の止水板は、開口部の外側に設置するものが多かった。浸水時、外側から止水板を押す水圧を利用して、止水板の外周部に取り付けた止水ゴムを側枠に密着させることで、浸水防止性能を発揮させるからだ。しかし、外開きドアでは、扉が開けにくくなる。

 この製品は、外開きドアの室内側に止水板を設置する。このため、設置後でもドアを開閉できる。

 浸水防止性能は、止水板の外周部に設置した止水ゴムを既存のドア枠に密着させることで確保する〔写真3〕。文化シヤッター商品開発部開発一部の廣瀬誠課長は、「室内側で止水するために、水圧を利用しないで止水ゴムを密着させる方法を考案した」と話す。

〔写真3〕枠に止水ゴムを押し付けて密着
〔写真3〕枠に止水ゴムを押し付けて密着
止水板をドア枠に取り付けた状態。止水板の外周部にある止水ゴムを、ドア枠に押し付けて密着させることで浸水防止性能を発揮する(写真:文化シヤッター)
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 止水板を設置するための事前工事が不要な点も売りだ。一般的な止水板は、固定するための側枠の設置工事が必要だったが、この製品は既存のドア枠に取り付けるだけで済む。ただし、住宅用玄関ドアには、枠の寸法や形状がスチール製ドアと異なるため設置できない。

作業員1人で1分以内に設置

 日本産業規格(JIS)A 4716では、止水板などの建具型における浸水防止性能の等級を、設定浸水高さに基づく漏水量によってWs-1~Ws-6の6段階に区分している。

 BX止水板ラクセットSDタイプは、設定浸水高さが350mmと600mmと850mmの3タイプで、等級はいずれもWs-5だ。Ws-5とは、1時間に1m2当たり1リットル超~4リットル以下の漏水量に該当し、日本下水道事業団が下水道施設に求める基準(Ws-3相当)よりも高性能になる。開口部の外側に設置する、文化シヤッターの床直置き型の止水板よりも上の等級だ。

 設定浸水高さを最大850mmとしたのは、設置後にドアを開閉できるよう、止水板の高さをドアハンドルの位置よりも低くするためだ。

 止水板はアルミ製で、重さが約12kg/m2と軽量だ。止水板をドア枠に押し込むだけなので、作業員1人で1分以内に完了するという。

 価格は間口900mm、高さ600mmで23万円(税・運賃込み)。設置工事が必要な着脱式止水板の材工価格の3分の1程度に相当する。