東京オリンピック・パラリンピックという非日常が終わり、再び日常が訪れた。しかし、新型コロナの感染対策による入場制限や、オンラインを組み合わせた新しい観戦の仕組みなどいくつもの環境変化が、スポーツ施設に変貌を迫っている。もはや「競技頼み」の常識は通用しない。10年先、50年先まで持続可能なスポーツ施設とは、どんな姿か。注目プロジェクトや五輪施設のその後、新しいトレンドから、持続可能の条件を考える。

スポーツ施設、持続可能の条件
五輪とコロナ禍が変えた観戦・集客の常識
目次
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球場の概念覆す“新庄野球”の砦
北海道ボールパークFビレッジ ビッグプロジェクトにみる持続可能性
野球場から「ボールパーク」へ。収益を確保し、ビジネスとして持続可能にするヒントが、建設中の北海道ボールパークFビレッジにある。温泉に漬かっての「ながら観戦」やマンション誘致など話題は尽きない。
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32カ月工期という超難題を解く
施工技術を解説 屋根と躯体を同時施工する秘策
可動屋根付きの天然芝スタジアムを、32カ月という短工期でどうやって施工するのか。施工者は屋根とスタンドを同時に施工するスライド工法を導入した。まさに施工が佳境を迎えた現場の今を見る。
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国立競技場、球技専用を見送りへ
五輪施設その後 赤字施設が大半で「負の遺産化」に危機感
東京オリンピック・パラリンピックという宴が終わり、五輪施設は後利用に焦点が移った。多くの施設で収益は赤字となることが濃厚で、レガシーへの道筋は視界不良だ。“ハコモノ”にしない工夫を改めて考える。
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街中よりも魅力的なスケートパークを
高まるアーバンスポーツ熱 五輪後の波に設計者も乗れるか
2021年夏の東京五輪では、スケートボードや自転車競技のBMX、スポーツクライミングなどのアーバン(都市型)スポーツが新種目に採用された。沸き上がるアーバンスポーツのブームに、建築設計者はいかに乗れるか。
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築20年で可動屋根を固定化へ
豊田スタジアム 維持コスト縮減のため苦渋の決断
築20年の豊田スタジアムで、可動屋根を固定化するという前代未聞の工事が進む。自己矛盾ともいえる改修は、運用コストを縮減するためのもの。金食い虫の“ハコモノ”にしまいと、豊田市は苦渋の決断を下した。
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“二毛作”で稼働率上げる
フラット八戸 非日常から日常利用へ発想を転換
アイスリンクとウッドフロアによる“二毛作”を実現したフラット八戸。企画段階から日常利用を想定し、逆算して設計した。スポーツ施設では珍しい手法に、“ハコモノ”にしないためのヒントが詰まっている。
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アマゾンも参入、SDGsアリーナ
社会課題への挑戦 “脱炭素”が不可欠となり施設の役割も変化
巨額をかけて建設される大規模なスタジアムやアリーナは、街づくりの核として社会的責任を背負う施設になりつつある。米国では気候変動対策の重要性を提唱するアリーナが誕生し、日本でもその萌芽が見られる。
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映像配信技術で観戦体験を向上
コロナ禍で急伸 導入進む映像配信技術、観客の一体感を醸成
コロナ禍を受けて、会場に足を運ばずとも試合観戦を楽しめるようにする映像配信技術が注目を浴びた。無観客開催や入場制限への対応として導入されたが、実は会場内での観戦体験を向上させる可能性を持つ。
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「エンタメ空間化」が加速
対談 梓設計 永廣正邦氏 × Blue United 中村武彦氏 世界の潮流を知る2人が語るスタジアムの未来
スタジアムやアリーナに求められる役割や、観戦スタイルの多様化が進む。こうした変化は施設の設計にどのような影響を与えるのか。世界の潮流を知る2人に今後のポイントを聞いた。
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座席を8割減らす香港からの訓示
ストック時代の潮流 スポーツ施設を持続可能にする3条件
持続可能なスポーツ施設とは何か。これまで見てきた事例から、3つの条件が浮かび上がる。身の丈に合った規模、他施設との差別化、収益構造の多様化──。“宴”が終わった今こそ、次代の「当たり前」を考えたい。