2021年夏の東京五輪では、スケートボードや自転車競技のBMX、スポーツクライミングなどのアーバン(都市型)スポーツが新種目に採用された。沸き上がるアーバンスポーツのブームに、建築設計者はいかに乗れるか。
2021年夏の東京五輪で若いアスリートが躍動する姿を見て「スケートボードがこんなにも老若男女問わず盛り上がれるスポーツだったとは」と多くの人が思ったことだろう。同大会では仮設会場「有明アーバンスポーツパーク」(東京都江東区)が試合に使われた。恒久化するかどうかは、複数の五輪会場がある有明北地区を「有明レガシーエリア」として整備する計画とともに、東京都が検討中だ。
11月9日には東京都が、Park-PFI(公募設置管理制度)を活用し、代々木公園の整備・管理運営事業予定者を選定した。選ばれたのはスケートパークの設置などを提案した、東急不動産を代表とする「代々木公園STAGES」だ。アーバンスポーツ施設は、街に新たな活力を与える起爆剤として期待がかかる。
スケボー施設の整備は続々と
スケートボードやBMXなどが楽しめる「スケートパーク」をつくりたいとの需要は五輪後に増している。有明アーバンスポーツパークのコース施工に携わったマサケン(東京都墨田区)の木村将人会長は、「これまで設計や施工の依頼が年間2、3カ所あったが、東京五輪後は改修を含めて約70件に増えた。25年ごろの竣工を目指すものが多い」と話す。
同社が携わり、茨城県笠間市で21年4月にオープンした「ムラサキパークかさま」は日本最大級のコンクリートパークを持つ〔写真1〕。若年層の集客を目指し、県と市が、県営の笠間芸術の森公園に整備した。指定管理者は、スケートボードなどの販売店を全国で展開し、各地でスケートパークの運営も手掛けるムラサキスポーツだ。競技人口の増加が用品の売り上げにつながると考え、遊ぶ環境づくりにも注力している。
パーク内には平らな部分を多く設け、初心者から楽しめる施設にした。開業から9月までの利用者は延べ約2万人。7割程度は若年層が占める。
- 所在地:茨城県笠間市笠間2345(笠間芸術の森公園内)
- 面積:約2万5200m2(駐車場など含む)、うち約460m2(パークゾーン)、約870m2(ストリートゾーン)、約2650m2(フラット&ビギナーゾーン)、約450m2(屋内ゾーン)、約170m2(管理棟)
- 設計者:オリエンタルコンサルタンツ
- 施工者:田口建設工業、久工(いずれもコンクリートパーク部分)
- 施工協力者:マサケン
- 指定管理者:ムラサキスポーツ
- 総事業費:約7億4000万円
- 施設内容:パーク、ストリート、屋内ゾーン、管理棟(ショップ併設)など
- 開業日:2021年4月3日
スケートパークを町おこしのカギにしようとする動きもある。
「スケートボードの聖地」を目指すのが、新潟県村上市。同市にはもともと市民会館を改修した屋内型スケートパークがあったが、施設の老朽化が進んでいた。
そこで企業版ふるさと納税を活用して新たに「村上市スケートパーク」を建設。同市が19年4月から運営している〔写真2〕。年間約1万人の利用者のうち、18歳未満が6、7割を占める。雪国のため、全天候に対応できる屋内型の施設とした。屋内施設では国内最大規模となる。世界を目指すスケートボード選手を育成する拠点にも活用していく。
- 所在地:新潟県村上市瀬波温泉3-2-22
- 延べ面積:約2670m2
- 設計・監理者:新日本コンサルタント
- 施工者:内山組・水倉組・大進建設特定共同企業体
- 管理・運営者:村上市
- 総事業費:約15億5338万円
- 施設内容:スケートボード(パーク・ストリート)、スラックライン、ボルダリングなど
- 開業日:2019年4月27日