民家が寄り集まったように建物を分節化し、周辺の町並みとの調和を図った木造の公民館。耐火構造が求められたホール空間では、鉄骨造との混構造を採用して、スギ製材による木造トラスを現しにした。
2021年10月1日、広島県尾道市の土生(はぶ)公民館が本格的な運用に入った。延べ面積950m2余りの平屋の建物は、大中小3つのホールや、地域交流ルーム、調理実習室などの各室が異なる向きで配置された不整形の変則プランだ。構造は木造が主体だが、一部は鉄骨(S)造との混構造になっている〔写真1、2〕。
- 耐火建築物(ホール棟)
- その他建築物(一般棟)
「周囲に広がる土生の町並みのように、小さな民家が寄り集まったような建物にした」。そう話すのは、設計を手掛けたシーラカンスアンドアソシエイツ(以下CAt、東京都渋谷区)パートナーの赤松佳珠子氏。同社は、18年に尾道市が実施した公募型プロポーザルで設計者に選ばれた。
土生地区は、瀬戸内海に浮かぶ因島(いんのしま)の中心地として古くから栄え、昭和の高度経済成長期には造船業で活況を呈した。網の目のように巡る細い路地沿いに、小さな住宅や店舗がひしめく町並みが、往事のにぎわいを今に伝えている。
そんな町なかにある土生公民館は、統廃合により、15年に廃校になった旧土生小学校の跡地に建てられた。すぐ近くにあった旧公民館が、築40年を超えて老朽化したため、場所を移して建設した〔写真3〕。