全1909文字
築50年の団地内にあった集会所を、木造で建て直した。準耐火構造が求められたため、燃えしろ設計と耐火被覆とを使い分け、様々なパターンに空間を組み替えられるフレキシブルな木質空間をつくった。
鉄筋コンクリート(RC)造の住棟が立ち並ぶ団地内に2021年4月、管理事務所を併設した木造平屋建ての集会所が完成した。横浜市磯子区の洋光台南第一住宅集会所・管理事務所だ。延べ面積は約445m2。折れ屋根をロの字形に連ねた建物の真ん中に、ハイサイドライトのある越し屋根が浮かんでいる〔写真1~3〕。
〔写真1〕一帯は高度経済成長期のニュータウン
南側に立つ住棟から見下ろす。分譲から半世紀を経た団地内の広場に立つ木造平屋の集会所。太陽光発電や蓄電池を備え、災害発生時には団地住民の防災拠点となる。写真左奥、2棟の高層アパートが見える場所に、最寄りのJR根岸線・洋光台駅がある。一帯には、1960年代後半からニュータウン開発が始まった住宅地が広がる(写真:安川 千秋)
[画像のクリックで拡大表示]
〔写真2〕外周に折れ屋根を連ねる
建物の外周に、ぐるりと折れ屋根が巡る外観。軒先を太く縁取ることで、折れ屋根の連続性を強調した。屋外の活動とも一体的に使えるように深い軒を出している(写真:安川 千秋)
[画像のクリックで拡大表示]
〔写真3〕活動が見える集会所
建物の4面にエントランスがあり、団地の各方面から出入りできる。写真は西側のエントランス。右は会議室、左はパーティールーム。各室をガラス張りにして、内部での活動が外からも見えるようにした(写真:安川 千秋)
[画像のクリックで拡大表示]
「築50年になるこの団地では、住民の高齢化など、様々な課題が出始めていた。そこで、今後さらに50年存続していくためのよりどころとして、若い人たちも集まりやすい集会所を木造でつくりたいという要望を受けた」。設計を手掛けたスタジオ・クハラ・ヤギ(東京都千代田区)共同代表の久原裕氏は、プロジェクトの背景をそう説明する。