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 パートナー事務所の形は様々だ。場所や所員を共有するため、といった場合もあるが、意見を戦わせて強い案をつくる、という積極的な目的の場合が多い。

 山本理顕設計工場出身の3人によるSALHAUS(サルハウス)は、より大型の建築に挑むため、他の組織との協働に活路を見いだす。注目されるのは金沢美術工芸大学のプロジェクトだ。ともに山本事務所出身者中心のパートナー事務所2社との協働で公募プロポーザルに勝った。

 今回、クローズアップしたのはツバメアーキテクツだ 「デザインとラボの両輪で前提から建築をつくる」参照 。建築設計と研究リサーチを両輪としながら、関心事や興味が微妙に違う3人が絶妙なバランスで取り組む。Eureka(エウレカ)のように、計画や意匠、構造といった担当分野を明確にしたパートナーシップも見られる。

(写真:MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO)
(写真:MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO)

原田 真宏
はらだ まさひろ 48歳(写真左)
MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO 共同主宰、芝浦工業大学教授
1973年生まれ。97年芝浦工業大学大学院建設工学専攻修了。97~2000年隈研吾建築都市設計事務所。01~02年文化庁芸術家海外派遣研修制度(J.A.M.LAPENA & ELIAS TORRES Architects)。03年磯崎新アトリエ。04年原田麻魚氏と共にMOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO設立。08年芝浦工業大学准教授。16年から同大学教授

原田 麻魚
はらだ まお 45歳(写真右)
MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO共同主宰
1976年生まれ。99年芝浦工業大学建築学科卒業。2000年建築都市ワークショップ。04年原田真宏氏と共にMOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO 設立

大規模建築の木造化で自然循環へ

「風景」に積極的に責任を持ち、デザインすることは都市/地方にかかわらず重点テーマだ。もう1つは循環型社会の実現に向けての「木造」の取り組み。大断面集成材なども用いて大規模建築を木造化することで、都市や社会全体を自然循環系へと再包摂することを試みている。加えてエンジニアリングウッドの開発・普及の状況は、新しい建築デザインを創出する可能性を生んでいる

〔主要プロジェクト〕ROOFLAG(2020年)、FLAPS(基本設計・監理およびデザイン監修、21年)、Ento(21年)、ストローグ社屋新築計画(22年予定)、ローバルホールディングス枚方工場計画(22年予定)、奈義町立こども園(楠山設計とJV、23年予定)

賃貸住宅の情報発信基地「ROOFLAG」。高さ2.3mのCLTの梁を格子状に組んだ巨大な庇のような架構が、大きなアトリウムをすっぽり覆う(写真:安川 千秋)
賃貸住宅の情報発信基地「ROOFLAG」。高さ2.3mのCLTの梁を格子状に組んだ巨大な庇のような架構が、大きなアトリウムをすっぽり覆う(写真:安川 千秋)
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A1
前世紀までのように社会の論理だけを建築の成立根拠とするのではなく、極めてフィジカルに「自然の論理にかなった建築」であることが必須となるだろうと考えている。そのような建築や都市によって、社会が自然の循環の中に再度位置付けられるようになっていくだろうと思っている

A2 「空間から時間へ」
これまでは空間の時代だったように思う。これからは空間に加えて、時間が大切なテーマとなると考えている。流れゆく時間の中をフィジカルにもソーシャルにも存続し続ける生命のような「動的平衡状態にあるプロセス」として建築や都市を捉えていきたい

(写真:大西麻貴+百田有希/o+h)
(写真:大西麻貴+百田有希/o+h)

大西 麻貴
おおにし まき 38歳(写真左)
大西麻貴+百田有希/o+h 共同主宰
1983年生まれ。2006年京都大学建築学科卒業、08年東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了。08年大西麻貴+百田有希/o+h共同主宰。17年から横浜国立大学大学院客員准教授

百田 有希
ひゃくだ ゆうき 39歳(写真右)
大西麻貴+百田有希/o+h 共同主宰
1982年生まれ。2006年京都大学建築学科卒業、08年同大学大学院修士課程修了。08年大西麻貴+百田有希/o+h共同主宰

誰もがその人らしくいられる場に

障害のある人と共に働く場「Good Job! Center KASHIBA」以来、障害のあるなしにかかわらず、全ての人がその人らしくいられる場を共に考える機会が増えている。山形市南部児童遊戯施設、多賀町中央公民館、コミュニティサポートセンター アルベロベッロなど

〔主要プロジェクト〕多賀町中央公民館 多賀結いの森(2019年)、熊野東防災交流センター(21年)、居住滞在型インキュベータ施設 toberu2(21年)、山形市南部への児童遊戯施設整備事業(21年予定)、熊本県地震震災ミュージアム体験・展示施設(o+h・産紘設計JV、23年予定)、京都市立芸術大学および京都市立銅駝美術工芸高等学校(乾・RING・フジワラボ・o+h・吉村設計共同体、23年予定)

熊本地震震災ミュージアム体験・展示施設。同ミュージアムの中核拠点施設として、旧東海大学阿蘇キャンパスに整備する(資料:o+h・産紘設計JV)
熊本地震震災ミュージアム体験・展示施設。同ミュージアムの中核拠点施設として、旧東海大学阿蘇キャンパスに整備する(資料:o+h・産紘設計JV)
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A1
その土地の風土、文化、暮らしや人々と真摯に向き合うことが、驚きのある空間、愛される建築を生み出していく。建築の定義が、建物1つをつくることを超え、周囲の環境や時間をも含んだより広く深いものになっていく

A2 「私たちの時代の理想郷」
暮らすこと、働くこと、学ぶこと、福祉が一体となった、多様な人々と動植物が調和の中に生きる場をつくる