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 デジタルの力は設計のプロセスばかりでなく、ものづくりや施工管理まで大きく変えそうだ。先導者の取り組みから、基本となるメニューや方向性は明らかになっている。

 21年に最も注目された1つが、国土交通省による3D都市モデル「PLATEAU(プラトー)」だ。水害時のシミュレーションをはじめ、防災や街づくりに貢献する。パノラマティクスの齋藤精一氏の力を借りて操作画面のデザインにもこだわる。同省都市局都市政策課の担当、デジタルネーティブの内山裕弥氏 「3D都市モデル「PLATEAU」 オープンデータのDX革命者」参照 の手腕が支えている。

 施工管理でも既にデジタル化が進展している。例えば「ANDPAD(アンドパッド)」。クラウド型の建設プロジェクト管理サービスで、16年のサービス開始以来、33万人以上の建設・建築関係者が恩恵を受けている。このサービスを展開するのが稲田武夫氏率いるスタートアップ企業のアンドパッドだ。

(写真:noiz)
(写真:noiz)

豊田 啓介
とよだ けいすけ 49歳
東京大学生産技術研究所特任教授、noiz、gluon
1972年生まれ。東京大学工学部建築学科卒業、米コロンビア大学GSAPP修士課程修了。安藤忠雄建築研究所、SHoPを経て、2007年にnoiz、17年にgluonを共同設立。21年より東京大学生産技術研究所特任教授

ゲーム技術などと連携

プログラミングやゲーム技術との連携により、バーチャル世界での建築や空間の設計、サイバーフィジカルインターフェースを扱う実空間、それらを束ねる都市や社会システムそのもののデザインに関わる機会が多い

〔主要プロジェクト〕SHIBUYA HYPER CAST. 2(2020年)、KABUTO ONE「The HEART」(アブストラクトエンジンと協働、21年)、PwC Otemachi Technology Laboratory(ゲンスラー・アンド・アソシエイツ・インターナショナル・リミテッドと協働、21年)、NTT Com Open Hub(22年予定)、Gaming House(22年予定)

SHIBUYA HYPER CAST.2。noizが外装などのデザインを監修した複合オフィスビルSHIBUYA CAST.の更新第2形態。垂直版のスマートシティーを構想(資料:noiz)
SHIBUYA HYPER CAST.2。noizが外装などのデザインを監修した複合オフィスビルSHIBUYA CAST.の更新第2形態。垂直版のスマートシティーを構想(資料:noiz)
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A1
バーチャルとフィジカルの二項対立ではなく、それぞれの分解可能な要素の混ぜ方や編集方法、より解像度が高くスムーズな接続が可能な場やモノ、システムのデザインが必須になっていく。noizとgluonではそうした拡張的プロジェクトにより戦略的に取り組む予定

A2 「R&D(研究開発)と領域拡張、質感と感性、コモングラウンドとインタースペース」
世の中がバーチャル空間シフトに動くなか、その先のバーチャルとフィジカルの接続領域の開拓が我々の価値であり役割だと考えている

(写真:本間 無量/ライゾマティクス)
(写真:本間 無量/ライゾマティクス)

齋藤 精一
さいとう せいいち 46歳
パノラマティクス主宰
1975年生まれ。東京理科大学工学部建築学科卒業。建築デザインを米コロンビア大学で学ぶ。2006年株式会社ライゾマティクス(現・アブストラクトエンジン)設立。16年から社内「アーキテクチャー部門」を率い、20年の組織変更でパノラマティクスと改称

行政や企業の仕組みなどをデザイン

仕組みやシステムをつくるアーキテクチャーデザインとして行政と企業の取り組みや、企業・団体間連携のデザインに力を入れている。部分最適の街づくりではなくマクロ視点で、都市や街のあるべき姿をつくるために「Act Tank」として実装し続けている

〔主要プロジェクト〕MIND TRAIL(奥大和地域誘客促進事業実行委員会ほか、2020・21年開催)、PLATEAU(国土交通省、21年)、KABUTO ONE「The HEART」(noizと協働、21年)、2020年ドバイ国際博覧会日本館 クリエイティブ・アドバイザー(22年3月末まで開催中)、2025年大阪・関西万博People’s Living Labクリエイター、JR東日本TokyoYard PROJECT

25年日本国際博覧会ウェブサイト掲載「サイバー万博(仮称)実施の方向性 2021.07月」より抜粋。サイバー万博の構造を示している(資料:アブストラクトエンジン)
25年日本国際博覧会ウェブサイト掲載「サイバー万博(仮称)実施の方向性 2021.07月」より抜粋。サイバー万博の構造を示している(資料:アブストラクトエンジン)
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A1
ハードウエアとしての建築デザインだけではなく、エリアマネジメントの運営やコミュニティー形成、それにまつわるサービス開発が建築デザインに密接に関わってくると考えている。文化と経済をどのように両輪で回していくのかが大事な時代になると思う

A2 「Action than Think」
企画や思考で終わってしまうことも多々あるが、次々に行動を起こし大きなうねりを起こし続けながら、あるべき社会の姿をつくっていくことが、デザインができる私の使命だと思う。「Think Tank」であると同時に「Act Tank」として機能するよう努力を続けていく

(写真:チームラボアーキテクツ)
(写真:チームラボアーキテクツ)

河田 将吾
かわた しょうご 44歳
チームラボアーキテクツ代表
1977年生まれ。京都工芸繊維大学卒業。2003年ORPPS/河田将吾建築設計事務所設立。09年チームラボアーキテクツの前身となる事務所を設立。15年チームラボアーキテクツに改称

世界の各地域でミュージアム設計

東京のお台場や豊洲で設計したチームラボのミュージアムを、世界の各地域で設計している。規模が拡大するため内部の作品だけでなく、その作品群を入れる建物、外部の庭も考えている。22年6月にスイス・ジュネーブで開幕するオペラの舞台デザインも進行中だ

〔主要プロジェクト〕キッズラボ南流山園(2021年)、チームラボボーダレス ジッダ(23年までに開館予定)、チームラボのミュージアムが開業する京都駅東南部の複合文化施設(24年度予定)、オペラ『トゥーランドット』のステージデザイン(ジュネーブ大劇場:22年6~7月、東京二期会オペラ劇場:23年2月)

22年8月まで東京・お台場で開催中の「森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス」。巨大な“地図のないミュージアム”(写真:チームラボ)
22年8月まで東京・お台場で開催中の「森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス」。巨大な“地図のないミュージアム”(写真:チームラボ)
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A1
情報革命で変化した社会の中で、どんな空間が必要かを考えないといけない。デジタル技術は生活に欠かせず、その進化は圧倒的な速度であり、人がデジタル技術とどう関係を結ぶかが、より重要になる。その中で、空間を使って人と人、人と自然の関係を模索したい

A2 「多様性、身体性、共創、環境」
我々を取り巻く環境に対して世界中の人が、互いの立場を尊重しながら問題に取り組む必要がある。空間は他者とリアルに時間を共有するためにも必要。人々が多様性を受け入れながら共に考えられる空間をつくり、それにより問題を少しずつでも解決できたらと思う