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 大学の建築系学科で教員の世代交代が進み、特に計画系の顔ぶれが若返っている。今回、最も注視すべき人物として10人に選ばれた人たちの中でも、西田司氏 「楽しむ姿勢が学生に浸透 「遊び感覚」で都市更新へ」 をはじめ、重松象平氏 「美術館に教育などの機能 新たな建物タイプ先取り」 やツバメアーキテクツの山道拓人氏 「デザインとラボの両輪で前提から建築をつくる」 、川島範久氏 「集落調査で得た知見生かし 建築材料の循環にテコ入れ」 が19年以降、教授や常勤講師として国内の大学教育に関わり始めた。

 設計の最前線に立つ若手教育者は、コロナ禍で講義のスタイルが変わりつつあるなか、建築教育に新風をもたらし始めている。例えば、西田氏。20年春にコロナ禍となった際、研究室のオンライン朝礼時に実務者にレクチャーを依頼し、「建築学生ラジオ」として公開した。自身の原動力である「対象を面白がること」を実践し、学生の活動意欲のアップを図る。トップダウンになりがちな研究テーマについては、学生の意見を聞くことも忘れない。

 九州大学の教授となり、「環境」をテーマにしたデザインとエンジニアリング教育のための新組織、BeCAT(ビーキャット)のセンター長も務める重松氏。JR九州住宅と共同で、学生たちが思い描く「理想の家」を実際に建築するスタジオを設けるなど、設計事務所のような実践教育に力を入れる。

 一方、藤原徹平氏のように、前任である北山恒氏が築いた横浜国立大学の設計教育の路線を引き継ぎ、自身なりにそしゃくして継承していこうというパターンもある。同大学大学院Y-GSAでは、第一線の建築家が教授を務め、学生がそれぞれのスタジオで課題を経験していく。北山氏が築いた建築家教育の仕組みを今後、どう発展させていくか。藤原氏の手腕に期待したい。

(写真:フジワラテッペイアーキテクツラボ)
(写真:フジワラテッペイアーキテクツラボ)

藤原 徹平
ふじわら てっぺい 46歳
横浜国立大学大学院 Y-GSA准教授、フジワラテッペイアーキテクツラボ主宰
1975年生まれ。2001年横浜国立大学大学院修士課程修了後、12年まで隈研吾建築都市設計事務所勤務。09年にフジワラテッペイアーキテクツラボを立ち上げ、12年より主宰。同年より横浜国立大学大学院 Y-GSA准教授

地域計画まで担う機会が増加

KURKKU FIELDS(クルックフィールズ)を手掛けて以降、日本各地の地域産業に関わる仕事が増えている。地域計画まで担うようなプロジェクトが多く、発注者側の意識の変化も感じる。地域計画やマスタープランづくりから行う場合は、プロジェクトマネジメント業務も担い、開発設計のようなことも担当する。そもそも新しい建築が必要なのか、規模をどうするか、などをじっくり議論することで、より面白いことができると思う

〔主要プロジェクト〕KURKKU FIELDS(2019年)、那須塩原市まちなか交流センターくるる(針谷將史氏と協働、19年)、SHEEPLA 泉大津市立図書館(トミトアーキテクチャと協働、21年)、OBAMA VILLAGE(22年予定)、東郷記念館建て替えプロジェクト(再生建築研究所と協働、22年予定)、チドリテラス/久が原プロジェクト(22年予定)

KURKKU FIELDS。千葉県木更津市の30ヘクタールの農場で、農業・食・アートを軸にこれからの人や社会の豊かさを提案する複合施設。2019年に1期が開業(写真:高野 ユリカ)
KURKKU FIELDS。千葉県木更津市の30ヘクタールの農場で、農業・食・アートを軸にこれからの人や社会の豊かさを提案する複合施設。2019年に1期が開業(写真:高野 ユリカ)
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研究室を廃し産業化以降を問う

大字では、建築の導入教育に力を入れるとともに、批評的な視点と自主性を学生に持たせることも重視している。これらは北山恒先生から引き継いだ横浜国立大学の教育の根幹だと思い、私なりに充実させながら継承している。また本学の設計授業は建築学科の全教員が常勤・非常勤の垣根なく議論しながら取り組んでおり、そのおかげか建築デザインは依然として人気も活気もある。大学院では産業と建築、都市と芸術の応答、この2つを研究テーマにしている。といってもY-GSAは研究室制度を廃止したので、スタジオテーマとして「POST INDUSTRY」という言葉を共有し、私も学生と一緒に地道に考えを深めている

A1
建築単体を考えるのではなく、地域産業や地域で暮らすことの価値そのものをデザインするような設計者が増えていくと思う。リサーチの重要性も増していくだろう

A2 「ランドスケープ、庭園」
1つの建築で人生もまちも変わっていく。土地の歴史から産業や生業の在り方を考え、地域の文化的景観を調べ、その場所にしか建ち得ない建築を1つずつ丁寧につくりたい。その上でランドスケープや庭園を重視したい。この40数年の間に、都市も田舎も建築の外側がつまらなくなった。建築をつくることで、その外側をどう面白くできるかを考えたい