工作機械と3次元デザインツールを組み合わせ、木工のデジタルファブリケーションを切り開いてきた。その新たなフェーズとして住宅供給を開始。全国に張った根を生かし、2023年までに100棟建設を目指す。
建築テック系スタートアップのVUILD(ヴィルド)(川崎市)を率いる秋吉浩気代表。建築家と起業家の顔を併せ持つ。
建築家としてはデジタル技術を活用した建築の可能性を探究している。東京学芸大学小金井キャンパスで計画が進む、同大学教育インキュベーション施設「学ぶ、学び舎」では、3次元加工したCLT(直交集成板)をコンクリートシェルの捨て型枠とし、内装用に残して木質化を図る〔写真1〕。横浜市にあるVUILDの工場で製作された模型(背景の右手)に、秋吉氏の探求の一端が垣間見える。
一方、起業家としては木工の生産・流通者のネットワークづくりや、建築や家具をつくるプロセスを一般に開く取り組みなどをしてきた。
それを生かしたデジタル家づくりプラットフォーム「Nesting(ネスティング)」の1棟目が21年11月に北海道弟子屈(てしかが)町で竣工した〔写真2〕。Nestingはアプリを操作して建て主自ら家を設計するもの。間取りを描くと家の形が立ち上がり、建具や設備、仕上げなどを選ぶと、3次元のイメージと見積もりがリアルタイムで更新される。
建設に際しては、VUILDが開発したデジタル木工プラットフォーム「EMARF(エマーフ)」と「ShopBot(ショップボット)」などデジタル木工機械を活用する。ShopBotはVUILDが国内販売代理店として各地に配備拠点を広げてきたものだ。