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 地方の状況を見る・知る機会は限られているが、地方創生は着実に進んでいる。例えば、公民連携の模範事例といえるオガールプロジェクト。同プロジェクトを先導してきた岡崎正信氏は新たなフェーズに挑む。地域を再生する人材の育成だ。

 地方の活性化では、出身地などに根差して、まちづくりや設計活動を続けるケースもあれば、大都市に身を置きながら地方にも拠点を設ける例も多く見られる。

 前者の代表例が、魚谷繁礼氏の取り組みだ。なかでも、「コンテナ町家」は印象深い。京都の築約100年の長屋を残して鉄骨造の床や屋根で覆い、個々の部屋を中古の流通コンテナで構成した。京都の歴史を理解している魚谷氏だからこそなせる設計といえるだろう。

 川添善行氏の場合は、後者だ。東京大学生産技術研究所として和歌山市と連携協定を結び、同市加太地区に研究室の分室を配置。腰を据えてまちづくりに取り組む。併せて、空間構想として、地域の構想づくりから建築設計まで一貫して手掛ける。

 一方、地方への移住ニーズに応えるのは、 「全国90超の拠点を結び デジタル木工で住宅供給」 でクローズアップした秋吉浩気氏による取り組みだ。VUILD(ヴィルド)が展開するデジタル家づくりのプラットフォーム「Nesting(ネスティング)」を利用しようという人の多くが移住希望者だという。既に90を超えた木工機械「ShopBot(ショップボット)」のネットワークを生かして土地情報を収集。建て主が自ら家を設計できるNestingと結びつけ、移住者の家づくりを支援する。

(写真:オガール)
(写真:オガール)

岡崎 正信
おかざき まさのぶ 48歳
オガール代表取締役、吉本・オガール地方創生アカデミー代表取締役
1972年生まれ。95年日本大学理工学部土木工学科卒業、2008年東洋大学経済学研究科公民連携専攻修了。1995年から地域振興整備公団などで地域再生業務に従事。2007年からオガールプロジェクトにおいて岩手県紫波町の公民連携事業を企画推進

地域を再生する人材育成に挑む

「まちづくりに成功は存在しない」という理念の下、完成した施設や建築物を常にリニューアルしている。また、地域を再生するリソースは「人」だと再認識し、教育の世界に飛び込もうとしている。オガールプロジェクトによって、地元紫波町中心部の人口回復、高齢化率の低減などが図られたが、中山間地域は過疎化が進行し、7つの小学校が統廃合される。これら小学校のアセットを活用し、中山間地域の基幹産業である「農業」をベースに、新しい産業を興していく。そのパートナー、吉本興業の人材育成ノウハウと、オガールの事業構築ノウハウを融合し、中山間地域の再生モデルになるよう事業を展開していきたいと思っている

〔主要プロジェクト〕オガールプラザ整備事業(2012年)、オガールベース整備事業(14年)、オガールセンター整備事業(17年)、紫波町公共資産活用事業(名称未定、25年予定)

オガールプロジェクトでは、JR紫波中央駅前の町有地に役場の新庁舎、図書館、宿泊施設、保育園、住宅地などを整備した。写真左手が官民複合施設オガールプラザ、右手が町内民間企業で出資したオガールベース(写真:オガール企画合同会社)
オガールプロジェクトでは、JR紫波中央駅前の町有地に役場の新庁舎、図書館、宿泊施設、保育園、住宅地などを整備した。写真左手が官民複合施設オガールプラザ、右手が町内民間企業で出資したオガールベース(写真:オガール企画合同会社)
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A1
コロナ禍を経験し、数十年早送りした社会に変貌した。リモート環境や働き方、暮らし方、そもそもの生き方について人は多くを感じ、変化させている。そして、1人では生きていけないことを認識した。今後は、共感社会がより構築され、寄付金やクラウドファンディングなどの共感資本が事業の根幹を担うと予想している。建築も、米国のように建築主に設計者が伴奏し、資金調達からいかに共感を得られるかが問われ、地球環境の維持をベースにしたエネルギーや森林活用、生産など新しい知見が建築に関わる人に必要になると思われる

A2 「教育」
お金も事業も残しても、それを維持発展できる人材を育成しなければ、時代の変化についていけない事業となってしまう

(写真:魚谷繁礼建築研究所)
(写真:魚谷繁礼建築研究所)

魚谷 繁礼
うおや しげのり 44歳
魚谷繁礼建築研究所代表、京都工芸繊維大学特任教授
1977年生まれ。2001年京都大学工学部卒業。03年同大学大学院工学研究科修了。20年より京都工芸繊維大学特任教授

歴史都市の都市構造の継承を図る

京都をはじめ、歴史都市の都市構造を継承するためのモデルとなるようなプロジェクトの実現を図りたい。コロナで中断中のアジアをはじめ、海外諸都市で進行中のプロジェクトを再開したい。大学では、3D点群スキャンを活用するなどした京都をはじめとする都市や地域の起源と変容、および現況に関する調査、都市や地域の計画、さらに都市や地域にふさわしい建築の提案とその実践を進めていきたい

〔主要プロジェクト〕SOWAKA(2019年)、コンテナ町家(19年)、ガムハウス(19年)、郭巨山の会所(22年予定)、小浜市阿納集落プロジェクト(23年予定)、辻のギャラリー(23年予定)

コンテナ町家。長屋と路地を生きた都市遺構として継承すべく、長屋を覆うように鉄骨のフレームを架構して床と屋根を設け、そこに中古の海上コンテナを設置した(写真:笹倉 洋平)
コンテナ町家。長屋と路地を生きた都市遺構として継承すべく、長屋を覆うように鉄骨のフレームを架構して床と屋根を設け、そこに中古の海上コンテナを設置した(写真:笹倉 洋平)
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A1
京都をはじめとする歴史都市や地域の構造を継承するモデルとなるようなプロジェクトの実現。時間や自然との関係をはらんだ建築や都市、地域の空間

A2 「都市や地域の構造の継承/京都/歴史都市/アジア」
これまで興味をもって取り組んできたこととその延長にあることについて、引き続き地道に取り組んでいきたい