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フィルム型の軽い太陽電池

 ターゲットは、窓や壁だけではない。東京ドームのような膜屋根の建物にも、太陽電池を置けるのではないか──。東芝がこうした期待を込めて開発しているのが、フィルム型ペロブスカイト太陽電池と呼ぶ技術だ。

 現在主流のシリコン系太陽電池と異なり、ペロブスカイトと呼ぶ結晶構造の材料を用いて発電する新しいタイプの太陽電池として注目されている。フィルムに塗って作製するため、折り曲げることもできる〔写真3図3〕。

〔写真3〕東芝が2025年度の製品化を目指して開発中
〔写真3〕東芝が2025年度の製品化を目指して開発中
東芝が開発したフィルム型ペロブスカイト太陽電池。同社は、国内のシリコン系太陽電池を目安に発電コスト20円/kWhの目標を据えて開発を続ける(写真:東芝)
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〔図3〕塗って作製するので曲げられる
〔図3〕塗って作製するので曲げられる
上は、東芝の開発しているフィルム型ペロブスカイト太陽電池の構成。ヨウ化鉛メチルアンモニウムを原料とするペロブスカイト結晶を活性層に利用する。下は、東芝が採用しているメニスカス塗布法と呼ぶ作製方法(資料:東芝)
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 薄いフィルムで基板や保護部材を構成するため、非常に軽いのも特長だ。一般的な結晶型シリコン太陽電池の10分の1ほどの重さしかない。

 東芝は21年9月、大面積のフィルム型ペロブスカイト太陽電池で世界最高の発電効率15.1%を実現したと発表。多結晶シリコン型太陽電池に相当する効率を実現し、製品化に向けて大きく前進した。

 適用先の1つとして、結晶型シリコン太陽電池のような重い製品では設置が難しい、工場などの屋根を想定している。同社研究開発センターナノ材料・フロンティア研究所の高須勲フェローは、「まずはRE100(事業活動で使用する電力を100%再エネで調達することを目指す国際的な企業連合)に参加している企業に率先して導入してほしい」と期待する。

 進化を遂げつつある太陽光発電設備。「屋根」の奪い合いは、建物のあらゆる「面」の争奪戦へと発展しそうだ。これまで導入が難しいとされてきたような建物に、いかに新たな創エネ技術を取り込み、意匠面も含めて建築物に統合するか。これからの設計者の腕の見せどころになる。