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延べ面積に対して屋上が狭い高層建築物などは、太陽光発電設備を置く場所を十分に確保できないため、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化しにくい。壁や窓を“発電所”にしようと、様々な企業がしのぎを削る。

 日本有数の進学校を運営する開成学園(東京都荒川区)が、2024年の竣工を目指して大規模な校舎の建て替え事業を進めている。先行して21年5月末に完成した開成高校の校舎を訪れると、道灌山通りに面した窓ガラスに、不思議なしま模様が入っているのに気づくだろう〔写真1〕。

〔写真1〕開成高校の新校舎に初採用
〔写真1〕開成高校の新校舎に初採用
大成建設が設計・施工を手掛けた新校舎では、窓ガラスと一体化した太陽光発電設備を計42枚採用した。しま模様の部分が設置箇所だ(写真:日経アーキテクチュア)
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開成高校の校舎南面の外観。今後、完成するほかの棟も含めると計66枚採用する予定だ(写真:日経アーキテクチュア)
開成高校の校舎南面の外観。今後、完成するほかの棟も含めると計66枚採用する予定だ(写真:日経アーキテクチュア)
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 実はこの窓ガラス、1枚当たり72.7Wの発電能力を持つ太陽光発電設備だ。屋外側には4mm幅の両面太陽電池をストライプ状に配して挟み込んだ合わせガラスを、屋内側にはLow-Eガラスを、中央に空気層を設けて配置。Low-E膜で反射した近赤外線で屋内側でも発電する〔図1〕。

〔図1〕開口率50%の太陽光発電設備
〔図1〕開口率50%の太陽光発電設備
T-Green Multi Solarのシースルータイプ(左)とその構成。太陽電池の隙間をすり抜けた近赤外線をLow-E膜で反射し、室内側から太陽電池に当てることで室内側でも発電できる(資料:大成建設、写真:日経アーキテクチュア)
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 開成高校では、校舎の南面・東面に計42枚を設置した。平時は照明などに電力を供給し、非常時は携帯電話の充電などに使用する。開発したのは大成建設とカネカ。19年末に発表し、今回初適用した。開成高校で用いた窓用のシースルータイプに加え、透過性はないが発電効率が3倍ほどある外壁用のソリッドタイプを用意した。

 「T-Green Multi Solar」と名付け、大成建設の設計・施工案件で提案に力を入れている。福岡市博多区の新庁舎では、両タイプを併用。北海道古平町の複合施設「かなえーる」ではシースルータイプを採用する。

 標準的なサイズの場合、参考価格(税抜き)はシースルータイプが1m2当たり5万円から、ソリッドタイプが同2万5000円から。設置部位により価格が変わるほか、施工費などが別途必要だ。