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公共建築物等木材利用促進法の改正などを背景に盛り上がる民間木造ビル市場に、住宅会社が続々と参戦している。ゼネコンの土俵に真正面から挑むか、5階建て程度に注力して住み分けるか。各社の戦略を伝える。

 千葉県鎌ケ谷市で2022年1月、高さ44.7mの木造ビルを擁する「東洋木のまちプロジェクト」が着工する。基礎免震を採用した高層棟は1階が鉄筋コンクリート(RC)造、2~15階がCLT(直交集成板)パネル工法による純木造。CLTを14層に用いるのは日本初だ。地元で戸建て住宅事業を営む東洋ハウジングが計画し、自ら施工にも挑む〔図1〕。

〔図1〕円形プランで引き抜き低減
〔図1〕円形プランで引き抜き低減
左は東洋木のまちプロジェクトの外観パース。右は高層棟の構造計画と2~15階の平面図。意匠設計は腰越耕太建築設計事務所、構造設計はストラクチャード・エンヴァイロンメントが担当。延べ面積は2876m2。竣工予定は23年11月(資料:東洋ハウジング)
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 同社の西峰秀一代表取締役社長は、「戸建て住宅を年間30棟ほど建てる当社のような規模の工務店でも日本一の木造ビルを建築できることを証明する。これを皮切りに木造20階、30階建てにも挑戦し、ゼネコンとの勝負に勝ってみせる」と意気込む。

 特徴的な円形プランについて西峰社長は「対称性のある円形にしたのは、免震層に生じる引き抜き力を低減するため。1階をRC造として重くしたのも、同様の理由だ」と話す。

 苦労したのが、高層ビルの施工管理ができる技術者と材工の調達ルートの確保だ。思うような人材と巡り合えず、建設会社出身の2人を採用するのに2年以上を要した。CLTの供給と木工事は実績が豊富なシェルター(山形市)に依頼。自社で手配が難しい材工の調達は、ナカノフドー建設を1次下請けとして対処した。

 高層棟の建設費は約17億6000万円(税込み)。坪単価は約200万円だ。賃料だけで収支を成り立たせるのは難しいと判断し、低層の商業施設を併設する計画に見直した。事業性の確保は今後の課題だ。