セメント製造時に大量の二酸化炭素(CO2)を排出するため、環境負荷の大きい材料の代表格だったコンクリート。CO2を吸収・固定する機能を持たせた「脱炭素コンクリート」として、生まれ変わろうとしている。
練り混ぜ中のコンクリートにCO2を噴射して固定し、生成した鉱物の効果でセメント使用量も減らす──。會澤高圧コンクリート(北海道苫小牧市)がカナダのCarbonCure Technologies(カーボンキュアテクノロジーズ)から斬新な技術を導入し、2021年11月にコンクリートの供給を始めた〔写真1〕。
生コンクリートの製造時、ミキサー内に液化CO2を噴射する。すると、CO2が練り混ぜ水に炭酸イオンとして溶け込み、セメントから溶出したカルシウムイオンと結合。微細な炭酸カルシウムの鉱物として固定化される。CO2を瞬間的に鉱物化するため、中性化の恐れはないという。
セメント表面にくっついた鉱物の周囲には、コンクリートの硬化成分が次々に付着。圧縮強度を高めてくれる。この効果を生かして配合を見直せば、セメント使用量を減らせる。
住宅の地盤改良に用いるH型PCパイルの場合、噴射で固定できるCO2は生コン1m3当たり1.38㎏。セメント量を減らして削減できるのが同22㎏。合計で同23.38㎏の削減効果がある。セメントを減らして製造原価を下げるメリットもある。
カーボンキュアの技術は北米を中心に500超の工場で採用済み。人気の秘密はビジネスモデルにある。會澤高圧コンクリートの會澤祥弘社長は「彼らはCO2の計量・注入装置を提供し、顧客はもうかった分の何パーセントかを支払う。初期投資が小さいので導入しやすい」と明かす。
同社は22年1月から、この技術を適用したH型PCパイルを1日に140トン製造する方針だ。価格は従来品と変えない。グループで年間約10万トンを生産するH型PCパイル全てに適用すれば、年間1000トン以上のCO2削減につながる。