自社のみならず、取引先も含めて二酸化炭素(CO2)排出量を削減する動きが大手企業を中心に加速している。デベロッパーなどの発注者も例外ではない。建設会社に対して、排出量の開示や削減を要求し始めた。
「コンクリートポンプ車の確率は96%」。建設現場のゲートに設けたカメラの前を大型車両が横切ると、AI(人工知能)が即座に車種を言い当てた。これは、大成建設が全現場のCO2排出量を計測するために開発したシステムの一部だ〔写真1〕。
どんな車両がいつ入場し、出ていったかを自動で記録。現場での稼働時間を基に排出量を算出する。現場外で給油して入場する「スポット入場型」の車両が対象だ。同社建築本部技術部建築技術室の竹尾健一次長は「ポンプ車の場合、5000枚の画像を使用してAIの学習を進め、判定精度を高めている」と話す。
現場で排出されるCO2は、重機の燃料(主に軽油)と事務所などで使用する電力に由来する。電気使用量は電力会社のデータで容易に把握できるが、燃料は複数のパターンがあるため把握が大変だ〔図1〕。
AIで計測する「スポット入場型」以外には、現場内でタンクローリーから給油する「場内給油型」がある。伝票を集めれば把握可能だが、かなりの手間。そこで同社は燃料供給会社に電子データの提供を打診している。産業廃棄物の運搬車両の燃料は、運搬先などを記録した電子マニフェストの情報を活用して計算する。
大成建設はこれまで、日本建設業連合会のルールに基づき排出量を算出していた。全現場の3割に当たる180現場で2カ月間調査し、それを割り戻す方法だ。しかし、「実数を把握しないと、有効な削減策を打てない」(同社環境本部企画管理部管理室の江村昇室長)と考え、効率的に全件把握できるシステムを開発した。2022年4月から180現場で試行し、23年度から全現場へ導入する。