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東京都心の各所で、緑や交通、地形など各エリアの個性を生かした開発計画が進んでいる。進化し続ける東京の姿からは、全国主要都市がこれから歩む都市再生の“道筋”が得られるはずだ。持続可能性や次世代交通といった、5つのキーワードと共にエリアごとの特徴をひもとこう。

建築・都市のサステナビリティーに対する要請は、今後さらに高まると予想される。東京都港区で進行中の虎ノ門・麻布台プロジェクトは、街区全体で100%再生可能エネルギー利用を目指す。先進的な開発となりそうだ。

 2023年3月に竣工予定の「虎ノ門・麻布台プロジェクト」(以下、虎ノ門・麻布台PJ)で本丸となる、高さ約330mのメインタワーが建ち上がってきた〔写真1〕。竣工時には日本一の高さとなる。計画区域は、東京タワーと六本木の間に位置する。もともと小規模な木造住宅やビルが密集していたエリアだ。約8.1ヘクタールの土地が、総事業費約5800億円をかけた大規模再開発により一変する。

〔写真1〕東京タワーに匹敵する高さ330mのメインタワー
〔写真1〕東京タワーに匹敵する高さ330mのメインタワー
工事中の虎ノ門・麻布台プロジェクト。写真左に写るメインタワーの姿がはっきりとしてきた。2021年11月25日撮影(写真:森ビル)
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 開発ではメインタワーを含む、3棟の高層ビルを建設。住居やオフィスを入れ、居住者数は全棟で合計約3500人を見込む。メインタワーの隣にはインターナショナルスクールを誘致する他、低層棟や地下には商業施設なども配置。東京都心の一画に小さな“都市”を生み出す。

脱炭素には再エネで対応

 地権者などと共に開発を進めるのが森ビルだ。同社の都市開発本部計画企画部計画推進2部、太田慶太部長は、「東京都は2030年に『カーボンハーフ』、政府は50年に『カーボンニュートラル』を打ち出した。我々もいち早くその流れに対応しなければならない」と危機感を抱く。

 虎ノ門・麻布台PJでは森ビルグループの電力事業者が非化石証書を購入。これにより対象街区内全ての使用電力を再生可能エネルギー由来とする。

 また、防災対応の強化や、周辺地域との連携は、サステナビリティーの観点でも重要となる。虎ノ門・麻布台PJの場合、敷地は東西に細長く、約18mの高低差がある。再開発により東西と南北に貫通する道路を整備し、周辺地域の渋滞緩和を図る。

 また、東西に約600m離れた2つの地下鉄駅を結ぶ通路を新設し、歩行者ネットワークを確保。バリアフリー動線をつくる計画だ〔図1〕。

〔図1〕東西と南北に貫通する幹線道路を整備
〔図1〕東西と南北に貫通する幹線道路を整備
虎ノ門・麻布台プロジェクトでは地区幹線道路や地下歩行者通路などの整備も実施する。赤枠が都市再生特別地区の区域(資料:森ビルの資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
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