東京都心の各所で、緑や交通、地形など各エリアの個性を生かした開発計画が進んでいる。進化し続ける東京の姿からは、全国主要都市がこれから歩む都市再生の“道筋”が得られるはずだ。持続可能性や次世代交通といった、5つのキーワードと共にエリアごとの特徴をひもとこう。
建築・都市のサステナビリティーに対する要請は、今後さらに高まると予想される。東京都港区で進行中の虎ノ門・麻布台プロジェクトは、街区全体で100%再生可能エネルギー利用を目指す。先進的な開発となりそうだ。
2023年3月に竣工予定の「虎ノ門・麻布台プロジェクト」(以下、虎ノ門・麻布台PJ)で本丸となる、高さ約330mのメインタワーが建ち上がってきた〔写真1〕。竣工時には日本一の高さとなる。計画区域は、東京タワーと六本木の間に位置する。もともと小規模な木造住宅やビルが密集していたエリアだ。約8.1ヘクタールの土地が、総事業費約5800億円をかけた大規模再開発により一変する。
開発ではメインタワーを含む、3棟の高層ビルを建設。住居やオフィスを入れ、居住者数は全棟で合計約3500人を見込む。メインタワーの隣にはインターナショナルスクールを誘致する他、低層棟や地下には商業施設なども配置。東京都心の一画に小さな“都市”を生み出す。
脱炭素には再エネで対応
地権者などと共に開発を進めるのが森ビルだ。同社の都市開発本部計画企画部計画推進2部、太田慶太部長は、「東京都は2030年に『カーボンハーフ』、政府は50年に『カーボンニュートラル』を打ち出した。我々もいち早くその流れに対応しなければならない」と危機感を抱く。
虎ノ門・麻布台PJでは森ビルグループの電力事業者が非化石証書を購入。これにより対象街区内全ての使用電力を再生可能エネルギー由来とする。
また、防災対応の強化や、周辺地域との連携は、サステナビリティーの観点でも重要となる。虎ノ門・麻布台PJの場合、敷地は東西に細長く、約18mの高低差がある。再開発により東西と南北に貫通する道路を整備し、周辺地域の渋滞緩和を図る。
また、東西に約600m離れた2つの地下鉄駅を結ぶ通路を新設し、歩行者ネットワークを確保。バリアフリー動線をつくる計画だ〔図1〕。