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戸建て住宅への再生可能エネルギー利用設備の導入促進に向けて国土交通省は、「再エネ促進区域」制度の創設を打ち出した。自治体が同区域内において建築士に再エネ設備の説明を義務付けられるようにする。

 「2030年までに新築戸建て住宅の6割に太陽光発電設備が導入されていることを目指す」。これが21年8月、国土交通省と経済産業省、環境省が合同で設置した「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等あり方検討会」において登場した政策目標だ〔図1〕。果たして実現可能なのか。どうすればできるのか──。

〔図1〕2030年には新築戸建て6割に太陽光発電設備
〔図1〕2030年には新築戸建て6割に太陽光発電設備
2019年度における新築戸建て住宅への太陽光発電設備の設置割合は約2割にとどまっている。図は積水ハウスが販売する環境配慮型住宅のイメージ(資料:積水ハウス)
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 社会資本整備審議会における建築環境部会と建築基準制度部会の合同会議では激しい議論が交わされた。両部会が22年1月20日に取りまとめた報告書には、再エネ設備の設置によって建築物の省エネ性能の向上を図ることが効果的な区域(以下、再エネ促進区域)を自治体が定める制度を創設することが盛り込まれた。

 再エネ促進区域を定めることで自治体ができることは、(1)建築士に対する再エネ設備の説明義務化、(2)形態規制緩和の許可──の2つ。

 説明義務については21年4月に開始した省エネ説明義務制度と同様の制度を想定。再エネ設備の導入効果などを建築主に説明することを建築士に課す。建築士の説明を通して適切な情報を提供することで、再エネ設備の導入を促す狙いがある。

 焦点となったのは、形態規制緩和だ。再エネ設備の設置で高さや建蔽率、容積率の限度を超えてしまう場合でも、設置を可能にする〔図2〕。ただしこの緩和は「特定行政庁が市街地環境を害さないことを個別に確認し、建築審査会の同意を得る」ことが、区域設定のほかに必要だ。

〔図2〕再エネ促進区域では許可の範囲内で形態規制を緩和
〔図2〕再エネ促進区域では許可の範囲内で形態規制を緩和
屋上などに再エネ設備を設置しようとしても、高さなどの形態規制が制約となって設置が困難なケースがあった。見直しによって、許可の範囲内で設置できるようにする(資料:国土交通省の資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
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