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建築分野における「脱炭素化」の柱の1つが、木材利用の促進だ。2021年に改正された木材利用促進法がこれから本格始動する。政府の目標策定に足並みをそろえ、木材による二酸化炭素貯蔵量の算定法も制定された。

 国土交通省のまとめによると、2019年度の1年間に国内で着工された建築物の床面積は1億780万5000m2。このうち木造の比率は約48%だ。近年、木造を採用したプロジェクトが増えているように感じるが、過半数が非木造だ〔図1〕。

〔図1〕全建築物平均の木造比率は5割弱(床面積ベース)
〔図1〕全建築物平均の木造比率は5割弱(床面積ベース)
新築建築物に占める木造建築物の割合。2019年度の建築着工統計によると、床面積ベースでの木造の比率は全体で48.1%。低層住宅以外での採用はまだ低水準だ(資料:国土交通省)
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 木材の原料となる樹木は、大気中の二酸化炭素(CO2)を吸収して育つ。木造への転換は、広義には社会全体で排出されたCO2を貯蔵する効果がある〔写真1〕。木造化の機運が盛り上がるなか、課題は何か。

〔写真1〕森林資源利用が本格化
〔写真1〕森林資源利用が本格化
大気中の二酸化炭素を吸収して育つ樹木は、それ自体が炭素の固まりだ。建築物の木造比率が高まれば、その分だけ社会における炭素貯蔵機能が増える(写真:吉成 大輔)
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 用途別、階数別に内訳を見ていくと、住宅では3階建て以下で木造の比率が82.5%だが、4~5階建てでは0.2%にとどまる。非住宅では2階建て以下のうち18.6%を占めるものの、3階建て以上はほとんどない。

 社会資本整備審議会の報告書では、こうした中高層住宅や非住宅の木造化率向上を課題として挙げ、解決に取り組む方針を打ち出した。