社会に衝撃を与えた東京・八王子のアパート階段崩落事故。国は再発防止策として建築基準法施行規則や告示を改正。2022年4月に施行する。日常に潜む「危ないデザイン」は、この事故にとどまらない。バルコニーからの転落や、ぬれた床による転倒など、建築物に関わる事故が相次いでいる。なぜ、事故はなくならないのか。建築実務者はいかに防げばいいのか。事故の詳細を追いかけるとともに、対策の最前線をリポートする。

日常に潜む 危ないデザイン
階段崩落事故で省令・告示を改正
目次
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木材腐朽が招いた階段崩落事故 国は防腐措置の具体策示す
東京・八王子のアパート階段崩落事故が発生して約10カ月。国は特定行政庁に指示して、事故物件の施工者が建てた214件の共同住宅の安全確保を進めている。併せて、再発防止策として省令・告示を改正した。
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絶えぬ転落は子育て集合住宅でも 事故防止へNPOが手すり考案
子どもがバルコニーの手すりを乗り越えるなどして転落する事故が後を絶たない。自治体が建てた子育て世帯向け集合住宅でも悲劇が起こった。相次ぐ事故を防ぐため、NPO法人が手すりの形を見直す実験を重ねている。
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リアルな使用状況を保育士と確認 保育園設計の名手にノウハウを学ぶ
保育園・幼稚園の設計を多数手掛けるプライム一級建築士事務所(東京都新宿区)は、園児を日常的な事故から守る設計の工夫を積み重ねてきた。2021年4月に開園した最新の保育園を例に同社の取り組みを紹介する。
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店舗で転んだ客が提訴 工作物の瑕疵を認めた判例も
店舗や施設で転倒してけがを負った客が、店舗や施設側に損害賠償を求める訴訟が相次いでいる。管理者の安全配慮義務の違反のみならず、建物の瑕疵(かし)が問われて、損害賠償を命じられるケースがある。
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ロール網戸のコードで幼児死亡 付属クリップの使い方知らず
上げ下げロール網戸の操作コードに幼児の首が絡まり、死亡する事故が2019年11月に発生。被害者の家族は網戸の製造会社と施工会社を提訴した。操作コードを束ねる付属クリップが争点になっている。
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「危険な手すりや階段をつくらないで」 日常災害の研究者が写真で指摘
建築空間での日常災害の防止を研究する大阪工業大学の吉村英祐特任教授は、街で見かけた「危ないデザイン」を収集している。ここでは、子どもの転落と歩行中の転倒リスクのある事例について、危ない理由を解説してもらう。
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ビッグデータで事故分析 画像から自動でリスク抽出
「安全について考える際には『事故は起こるもの』という前提に立ち、制御する方法を考えるべきだ。事故を扱う能力を備えた社会は安全性が高い」。こう語るのは、障害予防工学を研究する東京工業大学教授の西田佳史氏だ。西田氏は、デジタル技術を活用して生活空間での事故を予防する手法の開発に取り組んでいる。