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店舗や施設で転倒してけがを負った客が、店舗や施設側に損害賠償を求める訴訟が相次いでいる。管理者の安全配慮義務の違反のみならず、建物の瑕疵(かし)が問われて、損害賠償を命じられるケースがある。

 2016年10月、買い物客の50歳代男性がスーパーの店舗内のぬれた床で転倒して、左肘を骨折した〔図1〕。男性は店を経営する小田原百貨店(神奈川県小田原市)に損害賠償を請求する訴訟を起こした。東京地方裁判所は21年7月に下した判決で男性の主張を一部認め、店に2185万円の支払いを命じた。

 【 事故原因 】

〔図1〕ぬれた床で転倒
〔図1〕ぬれた床で転倒
買い物客が転倒したときの様子を判決文を基に再現した。買い物客はサニーレタスから垂れた水でぬれて滑りやすくなった床で転倒した、と判決で認められた(資料:判決文を基に日経アーキテクチュアが作成)
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 転倒した箇所の床には、サニーレタスから水が垂れていた。店側は「ぬれていたとしてもごく狭い範囲で、男性が滑りやすいサンダルを履いて急いで買い物をしていたことが事故の原因だ」と争った。

 これに対して裁判長は「ぬれると分かっていたのに、危険性を考慮して清掃などの転倒防止のための対応を採っていた形跡がうかがわれない」として、安全配慮義務に違反すると判断した。

 裁判官が認めた客の過失は20%だったが、店は控訴せず判決は確定した。「滑り止めのシートを部分的に張って、再発防止に努めている」と小田原百貨店は話す。