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Qモルタルを用いた積層造形の仕組みは?

 セメント系建設3Dプリンターの場合、プリンターの先端にあるノズルを水平移動させながら一定量のモルタルを連続して吐出し、1層ずつ積層して複雑な形状の構造物を造形していく。1層当たりの厚さは1cmから数センチメートルまで、プリンターによって異なる〔写真1〕。

〔写真1〕ノズルからモルタルを吐出
〔写真1〕ノズルからモルタルを吐出
モルタルを積み重ねて造形するので、表面には特徴的な積層痕が残る(写真:日経アーキテクチュア)
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 積層経路は一筆書きが基本だが、大林組はプリンターとポンプを連動して制御し、吐出の開始や停止を自在に行えるようにして、経路の自由度を高めた。

 モルタルには、圧送時に高い流動性を持ち、ノズルから吐出した後は粘度が高まって崩れにくくなる性能(チキソトロピー性)が求められる。また、積層しても重みで崩れることがないように、短時間で固まる性質も欠かせない。ただし、固まるのが早すぎると層間に非連続層が生じやすくなるため注意が必要だ。

 安定して印刷するには、材料の配合やプリンターの制御などを最適化しなければならない。このため、プリンターの開発には建築や土木だけでなく、材料や機械、ITの知識が不可欠になる。

Qプリンターの種類や価格は?

 産業用ロボットアームをベースにしたプリンターは制御しやすく、細やかなデザインの構造物を印刷するのに向いている。ただし、一度に印刷できるサイズには限りがあり、大規模な構造物をつくるには部材を分割して印刷したうえで、現場で組み立てる必要がある〔写真2〕。

〔写真2〕プリンターは大きく2種類

デンマークのCOBOD Internationalが販売している門形プリンター(写真:日揮ホールディングス)
デンマークのCOBOD Internationalが販売している門形プリンター(写真:日揮ホールディングス)
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クラボウが導入した仏XtreeEのアーム型プリンター(写真:日経アーキテクチュア)
クラボウが導入した仏XtreeEのアーム型プリンター(写真:日経アーキテクチュア)
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 一方、門形のプリンターは大型の構造物を現場で印刷するのに向いているが、アーム型に比べると繊細なデザインは得意でないものが多い。

 このほか、クレーンの先端にノズルを取り付けて印刷するタイプなどもある。価格は印刷可能なサイズによって異なるが数千万円が相場。1億円を超える製品もある。ただし、製品としての完成度はまだまだ。ベータ版の位置づけで販売するケースが多い。海外製のプリンターは日本で入手しにくい材料を使用しているケースも多いため、注意が必要だ。