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独自に建設3Dプリンターの研究開発を進めてきた大林組、清水建設、大成建設の3社。清水建設が自社開発物件に使用したのを皮切りに、当面は埋設型枠への適用が進みそうだ。各社が次の展開を探っている。

 大手建設会社はこれまで、自社の研究開発拠点で建設3Dプリンターを用いて構造物を造形し、その技術力を対外的にアピールしてきた。

 例えば大成建設は2020年、同社などが開発した門形プリンターで部材を分割して印刷し、長さ6mの橋を製作した。

 一方、大林組は19年、屋内で分割して印刷した部材を組み合わせ、幅7m、奥行き5mのシェル型ベンチを完成させている。製作に当たっては、アーム型プリンターで特殊モルタルによる「型枠」をつくり、内部に同社などが開発した超高強度繊維補強コンクリート「スリムクリート」を流し込んで引っ張り力を負担させた。

 このように、技術が一定の水準に達したことで、各社は実現場への適用を目指し、検証を重ねている。

 大林組は22年度、平屋の構造物を技術研究所内に施工する予定だ。ベンチと同様にプリンターで型枠を造形し、内部にスリムクリートを流し込んで壁にする方針だが、今回は現場にプリンターを据え付け、基礎の上にじかに印刷する点が異なる。

 空調設備などを備えた内部空間を設ける。設備配管は、壁内に設けた中空部に通す計画だ。大林組設計ソリューション部アドバンストデザイン課の木村達治課長は、「プリンターを屋上に設置すれば、2階の壁を製作できる。技術的に多層化できることを確認したい」と語る〔図1〕。

〔図1〕施工性を検証しながら設計

3Dプリンターを用いた構造物の製作に当たって、大林組が整理した設計・施工のフロー。Grasshopper(グラスホッパー)のプラグインを開発し、上に向かって張り出すように積層した際に問題が生じないか、アームが積層物とぶつからないかなどを検証する(資料:大林組)
3Dプリンターを用いた構造物の製作に当たって、大林組が整理した設計・施工のフロー。Grasshopper(グラスホッパー)のプラグインを開発し、上に向かって張り出すように積層した際に問題が生じないか、アームが積層物とぶつからないかなどを検証する(資料:大林組)
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設計案(資料:大林組)
設計案(資料:大林組)
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同社が以前製作したベンチ(写真:日経アーキテクチュア)
同社が以前製作したベンチ(写真:日経アーキテクチュア)
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