新たな建築生産方式として注目される建設3Dプリンター。欧州や米国ではスタートアップ企業が設計事務所や建設会社などとタッグを組み、住宅などの実例を増やしてきた。海外勢に後れをとってきた日本の巻き返しはなるか。取材を進めると、国内でも小規模なグランピング施設や、確認済み証の交付を受けた倉庫などが建設中であると分かった。住宅など複数の計画も進行中。2022年は建設3Dプリンター元年になりそうだ。

ここまで来た 建設3Dプリンター
目次
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世界はこんなに進んでいる 建設3Dプリンター業界地図
日本では、大手建設会社が自社での活用を念頭に置いて個別に開発を進めてきた建設3Dプリンター。世界を見渡せば、設立から間もないスタートアップ企業が主役となって急速に事業化を進めている。
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国内初の3Dプリンター建築 スタートアップの主導で新境地
セメント系建設3Dプリンターの開発を手掛けるスタートアップ企業のPolyuse(ポリウス)(東京都港区)が建築設計事務所とタッグを組み、10m2を超える倉庫を「印刷」した。確認済み証の交付を受けた国内初の事例だ。
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建設3Dプリンターのキホン
セメント系建設3Dプリンターの場合、プリンターの先端にあるノズルを水平移動させながら一定量のモルタルを連続して吐出し、1層ずつ積層して複雑な形状の構造物を造形していく。1層当たりの厚さは1cmから数センチメートルまで、プリンターによって異なる。
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住宅からグランピング施設まで 22年は建設3Dプリンター元年に
米国や欧州と比べて建設3Dプリンターの実例が少なかった国内で、住宅やグランピング施設など複数のプロジェクトが立ち上がっていることが分かった。2022年は日本の「建設3Dプリンター元年」になりそうだ。
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材料はサトウキビ由来 「脱炭素チェア」を印刷
オカムラ
オカムラは3Dプリンターでオフィス家具を印刷する事業を展開する。2022年中にも販売を始める予定。初年度は100台の販売を目指す。
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大手ゼネコンの自前プリンター 埋設型枠が当面のターゲット
独自に建設3Dプリンターの研究開発を進めてきた大林組、清水建設、大成建設の3社。清水建設が自社開発物件に使用したのを皮切りに、当面は埋設型枠への適用が進みそうだ。各社が次の展開を探っている。
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ケーブル式大型プリンター 用途は印刷にとどまらず
慶応義塾大学×エス・アイ・エス
慶応義塾大学は、撮影用特殊機材の製作などを手掛けるエス・アイ・エス(川崎市)と共同で、ケーブルウインチ式3Dプリンター「ArchiFab NIWA」を開発している。アーム型や門形といった現在主流の建設3Dプリンターとは異なる仕組み。建築物にとどまらず、庭などの造形に適用できそうな技術だ。
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「田植え方式」プリンターで弱点克服 モルタル積層間を自動補強
東北大学×前田建設工業
東北大学は前田建設工業と共同で、セメント系3Dプリンターで印刷した構造物の強度を高める方法を開発している。国土交通省が募集していた2021年度の建設技術研究開発助成制度に採択された。交付予定額は923万円だ。
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樹脂や金属で建築の「印刷」へ 竹中工務店がコラボで先陣
竹中工務店は他の大手建設会社と異なり、スタートアップ企業などとの協業を通じて建設3Dプリンターの可能性を探っている。米国やオランダの企業とコラボレーションした成果を紹介しつつ、同社の戦略に迫る。