Cradle to Cradle(クレイドル・トゥ・クレイドル)(C2C)──。これは完全な循環型デザインを意味する。大量生産の末に“廃棄はやむを得ない”としてきた従来の考え方を、根底から見直すものだ。そのC2Cを体現したような、英国の住宅を紹介する。
「コルクハウス」は2019年、英国ロンドン近郊のバークシャー州イートンに完成した。イートンは19世紀から続く伝統的な工場地域である。その一角に、5つに連なるとんがり屋根のコルクハウスはたたずむ〔写真1〕。
意匠設計者のMatthew Barnett Howland(マシュー・バーネット・ハウランド)氏とDido Milne(ディド・ミルン)氏は圧延加工したコルクの断熱性や耐候性に着目し、自邸の庭にコルクブロックを使った家を建てることを構想した。
そして両親のためのセカンドハウスとして計画したのが、コルクハウスだ。床などに使ったCLT(直交集成板)部材や杭基礎を除き、大部分をコルクでつくり、また設計者自身の手作業によって建設した〔写真2、図1〕。
アラップはコルク造の住宅を実現するため、構造設計と火災安全設計のエンジニアとして、コルク材の配合検討から設計までをサポートした。