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オーストラリアのシドニー近郊にある大学内で、2棟の木造建築が立つ。いずれも大断面集成材と、大判のCLT(直交集成板)を用いた構造だ。古典的な材料である木材と現代のテクノロジーを適用することで、短工期で加工し、組み上げた。

 オーストラリア・シドニーにあるマッコーリー大学で、キャンパス内に「インキュベーター」と呼ぶ建物がある。学生や研究者へ起業家訓練・教育プログラムなどを提供し、スタートアップの支援を行う施設だ。2016年7月に設計者が選定されてから竣工するまでわずか1年。17年7月にオープンした〔写真1〕。

〔写真1〕シドニーの大学に木造建築
〔写真1〕シドニーの大学に木造建築
2017年にオープンした「インキュベーター」。意匠設計はオーストラリアの設計事務所Architectus。アラップは、構造設計、ファサードエンジニアリング、建築設備設計、環境コンサルティング、音響設計、ライティングデザイン、土木設計を担当した(写真:Murray Fredericks)
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 短い工期である上に、コンペ時は敷地が定まっておらず、建物用途も明確ではなかった。加えて、将来、建物用途が変化しても柔軟に対応でき、解体移築も可能な建築が求められた。

 昨今、欧州や日本ではCLTや集成材、LVL(単板積層材)などのエンジニアリングウッドの有用性がうたわれている。オーストラリアでもエンジニアリングウッドの重要性は注目を集めているが、中大規模の木造となると供給が間に合わず、欧州からの輸入に頼っているのが現状だ。

 この建物では、外周のV字柱を除き、床組みと屋根組み構造には全て欧州から輸入したスプルース材を使用している〔写真23〕。

〔写真2〕V字柱で大空間を実現
〔写真2〕V字柱で大空間を実現
外周のV字柱で鉛直荷重、水平荷重ともに負担することで、15m×32mの大空間を形成し、インテリアの壁や外装フレームを全て重力と水平力から解放した(写真:Murray Fredericks)
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〔写真3〕ユニット化した屋根を架ける
〔写真3〕ユニット化した屋根を架ける
「インキュベーター」でユニット化した屋根の施工写真。外部に露出するV字柱には、オーストラリア国産の広葉樹ビクトリアンアッシュを採用した(写真:Strong build)
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同じ大学で20年に完成した「エインズワース・ビルディング」。意匠設計はArchitectus。アラップは構造設計やファサードエンジニアリング、建築設備設計、環境コンサルティング、音響設計、オーディオ設計、土木設計を担当した(写真:Arup)
同じ大学で20年に完成した「エインズワース・ビルディング」。意匠設計はArchitectus。アラップは構造設計やファサードエンジニアリング、建築設備設計、環境コンサルティング、音響設計、オーディオ設計、土木設計を担当した(写真:Arup)
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 CLTと集成材によりユニット化した床下部分は設備スペースとした。また、屋根組みも照明デザインと一体でユニット化することで、現場で素早く組み立てられる構造とした。屋根は、21m×3.6mのユニットを工場で22体製作。交通量の少ない深夜から早朝にかけて運搬した。たった5人の職人により面積約2000m2の屋根が4日間で組み上がった。