子ども関連政策を積極的に進める政府に対し、事業者も子育て世帯に向けた商品開発を活発化させている。コロナ禍で家族の生活様式は変容し、設計者も「キッズ住宅」の考え方をアップデートすることが必要だ。
「子ども政策を我が国のど真ん中に据えていくため、『こども家庭庁』を創設します」。1月17日、岸田文雄首相は通常国会の施政方針演説で、こう述べた。2月25日、「こども家庭庁」設置法案が閣議決定し、国会で成立すれば2023年4月に内閣府の外局として発足することになる。
国土交通省は子育て世帯の環境整備に向けて、1月から「子育て支援型共同住宅推進事業」を開始、3月下旬から「こどもみらい住宅支援事業」の申請を開始する( 国が子育て住宅に補助金 鍵は「安全確保」と「交流」 参照)。
今、子育て支援型共同住宅推進事業を始めたことについて国交省住宅局参事官付の八木下和課長補佐は「子育てに焦点を当てた住宅開発を立ち上げている民間事業者が増えてきている。だが、全体の流れには至っていない。この推進事業は、そうした動きを後押しする狙いがある。賃貸住宅の場合、補助があることで子育て環境の整備が進めば、大家にとっても特徴のある部屋として貸し出しやすくなるだろう」と説明する。
コロナ禍に対応した住宅提案
「キッズ住宅」に力を入れている企業の1つが、LIXIL住宅研究所(東京都江東区)だ。08年に社内シンクタンク「キッズデザイン研究所」を創設。実証実験や調査を行っている。
同社はコロナ禍によるライフスタイルの変化に、敏感に反応した。21年7~8月、子どもがいる既婚者を対象に調査し、大人も子どもも運動できる場所のニーズが上位に入ることが分かった〔図1〕。1人でこもれる場所やワークスペースの要望も少なくない。
既存の住宅商品もコロナ禍を受けて見直した。20年7月、同社が展開するアイフルホームで、玄関手洗いなどを設ける「FAVO for DAYS+(フェイボフォーデイズプラス)」の提供を開始。21年度キッズデザイン賞を受賞した〔写真1、図2〕。
アイフルホームは基本理念に、「こどもにやさしいはみんなにやさしい」を掲げている。LIXIL住宅研究所商品本部研究開発部研究開発グループ兼キッズデザイン研究所の山﨑美裕紀氏は、「子ども目線で考えられた家は、結果的に高齢者なども含めて家族全員が快適に暮らせる家になる」と話す。