全1831文字
PR

家庭によって子どもの育て方は千差万別。しかも子どもは大きくなれば好みや性格が変わることもある。家族の成長や変化に住宅でどう対応できるか。環境行動研究を専門とする早稲田大学の佐藤将之教授と、設計実務で子育て住宅を手掛けてきた成瀬友梨氏の2人に「キッズ住宅」のポイントを聞いた。

価値観の押しつけはNG 子どもとの対話を重視

子どもの成長に建築はどのような役割を果たすのでしょうか?

 私は、子どもたちの内面を育むために建築があるべきと考えています。

 子どもが走り回るなどの見た目では評価できません。学校や保育園など建築物が持つ役割に応じて、子どもが社会性を獲得し、学び、生活をするために必要な環境を検討すべきです。

 今、教育現場は主体的に考えられる子どもが育つことを目指しています。学校などの建築物の設計では、それを支えるようにつくることが求められています。住宅も同じ方向です。

住宅では個室とリビング・ダイニングのどちらが学習環境としていいかなど、流行があるようです。

 子の勉強場所は親の働き方に関係しています。共働き世帯では、帰宅した親のそばでコミュニケーションを取りながら、子どもがリビングで宿題をする場合が多いです。

 我が家の場合は兄弟それぞれに勉強場所の好みがあり、成長に応じて居場所が変化しました〔写真1〕。

〔写真1〕兄弟の勉強場所が成長に応じて変化
(写真:佐藤 将之)
(写真:佐藤 将之)
[画像のクリックで拡大表示]
(写真:佐藤 将之)
(写真:佐藤 将之)
[画像のクリックで拡大表示]
(写真:佐藤 将之)
(写真:佐藤 将之)
[画像のクリックで拡大表示]
佐藤氏の子どもが勉強をしている様子を時系列に並べた。順に、長男が小学1年生の時(2014年)、同5年生の時(18年)、中学1年生の時(20年)の写真だ。18年は長男が次男に勉強を教えていたので、机を並べていた

子育て世帯の住宅設計で気を付けるべきことは何でしょうか。

 「リビング学習がいい」といった、親や設計者の価値観や意見を子どもに押しつけないことです。子どもと対話して進めることを薦めます。

 私が旭化成ホームズと共同研究した結果、ローン金利の低さなどを背景に住宅の購入時期が早まり、子どもの就学前に家を建てる家族が増えていることが分かりました。親子が「こうしたい」という状況に応じて変えられる家づくりが重要になります。

佐藤 将之(さとう まさゆき)
佐藤 将之(さとう まさゆき) 1975年生まれ。99年新潟大学工学部建設学科卒業、2004年東京大学大学院博士課程修了、博士(工学)。専門は、建築計画、こども環境。20年度こども環境学会論文著作奨励賞受賞。現在、早稲田大学人間科学学術院教授。男児2人の父(写真:本人提供)