幼い姉弟が運動を楽しめる仕掛けを生活空間にちりばめた。築約25年の住宅を改修するに当たって設計者は、建て主から要望のあった遊具類を配置するだけでなく、室内動線と連動させて限られたスペースの活用を試みた。
母に支えられながら、生後7カ月の長男が遊具ネットに体を委ねている。2歳の長女にとっても、和室に吊るしたネットは格好の遊び場となっている〔写真1〕。
夫婦と幼い姉弟の4人家族が暮らすY邸は、日常生活の場に運動の道具を組み込んでいる。階段室の壁にはボルダリングのホールド(突起物)が色とりどりに並び、その先の天井には雲梯(うんてい)が架かる〔写真2〕。
Y夫妻は完成後およそ25年を経た鉄骨造3階建て住宅を購入して改修した。建物の1階はもともと賃貸住戸で、外階段を用いてアプローチする2、3階が一家の住まいとなる。
改修の終わった2020年10月まで、設計と工事の期間はコロナ禍の始まりとほぼ重なった。「長女が通う保育園の行事が限定され、新しい家の中で過ごす時間も長い。外出自粛を意識して遊具を付けたわけではないが、家の中で子が体を動かして発散できることは助かる」と妻は語る。近くに住む親戚の小学生たちがやって来て、ネット遊具やボルダリングでにぎやかに遊ぶこともある。