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共同住宅を対象に、子育て世帯に向けた環境整備を促す国の補助事業が始まった。住宅内での事故防止や、不審者の侵入防止を目的とする「安全確保」と、「交流施設の設置」という2本立ての構成だ。

 国土交通省は2022年1月に「子育て支援型共同住宅推進事業」を開始した。3月下旬から申請開始となる同省の「こどもみらい住宅支援事業」が戸建てを含む住宅を対象としているのに対し、こちらは共同住宅を対象とする。

 両事業では内容も大きく異なる。こどもみらい住宅支援事業は省エネ化の推進に力点を置く。ビルトイン食洗機や宅配ボックスといった子育て対応の改修工事は任意とし、工事内容に応じて補助額を設定する。

入居者退居時の改修を視野に

 一方、子育て支援型共同住宅推進事業は「安全確保」と「交流施設の設置」の2本立ての構成となる。その内容は次の通りだ〔図1〕。

〔図1〕「分譲新築」以外の共同住宅が補助対象
〔図1〕「分譲新築」以外の共同住宅が補助対象
国土交通省「子育て支援型共同住宅推進事業」の対象と要件。「賃貸の新築」と「賃貸・分譲の改修」に大別され、「分譲新築」は対象から外れる。申請期間は2022年1月20日から5月31日まで(資料:国土交通省の資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
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 対象となる工事は「賃貸住宅の新築」と「賃貸または分譲住宅の改修」。小学生以下の子どもを養育する子育て世帯の居住が条件となる。分譲住宅の新築を除外するのは、子育て世帯が居住するという要件を担保することが難しいからだ。さらに、「新築の分譲マンションは一定の安全対策を施している事例が多い。この事業では、対策が不十分な共同住宅の底上げを目指す」(国土交通省住宅局参事官付の八木下和課長補佐)という狙いもある。

 賃貸住宅の新築は、棟ごとに申請する。「安全確保」に関する全19項目の取り組みと、「交流施設の設置」を促す4項目のうち2項目以上の整備が必須となる。そして、安全確保に資する設備を装備した住戸を1棟当たり5戸以上にすることが条件だ。

 改修の場合は、住戸単位で申請できる。「入居者が入れ替わる際に合わせて安全確保の改修を施す場合などを想定している」(八木下氏)。安全確保は19項目中5項目が必須。交流施設の整備は必須でないが、申請する場合には安全確保を施した住戸が5戸以上という条件が加わる。