木材や鋼材の価格が上昇するなか、ロシアのウクライナ侵攻が勃発。欧米による金融・経済制裁の報復として、ロシアが木材などの輸出規制に踏み切った。今後、資源不足が一層深刻化し、コロナ禍で高騰していた建設資材は、さらなる値上げが懸念される。この特集では、資材高騰のカラクリを解説するとともに、住宅会社やゼネコン、設計事務所などが取り組む対策の最前線をリポートする。

資材高騰の衝撃
ウクライナ侵攻で値上げ加速か?
3資材とも2021年から上昇傾向
目次
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ロシア発ウッドショックか ウクライナ侵攻で高騰に拍車
建設資材高騰が続くなか、ロシアのウクライナ侵攻が始まった。ロシアは経済制裁への報復で、一部の木材輸出を停止。ロシア発ウッドショックの懸念が高まる一方、他の建材にも侵攻の影響が現れ始めた。
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終わらないウッドショック 長期化の理由を供給網でひもとく
木材
需給バランスが崩れ木材価格が急騰したウッドショック。今なお、高騰は続いている。2021年秋からは合板価格が急上昇。長引く原因はどこにあるのか。供給網を見れば、その真因が浮かび上がる。
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1年半で価格1.5倍の異常事態 「隈建築」も開業延期に
鋼材
鋼材価格の上昇が止まらない。調達が遅れ、工場建設の見直しや公共施設の開業延期など、建築プロジェクトにも影響が出始めた。鉄鉱石と石炭の価格高騰で需給バランスが崩れ、価格の先行きが見通せない。
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生コン過去最大の値上げ 内需は横ばいでも高騰する理由
コンクリート
木材、鋼材だけでなく、生コンクリートの価格も上がっている。主な原料である石灰石や砕石は国内産で、かつ国内のコンクリート需要に急増の気配は見られない。生コン価格上昇の原因はどこにあるのか。
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内装材大手サンゲツ社長が語る 「このままでは業界総倒れ」
内装材
原料・燃料の高騰で、建材・設備の値上げが相次ぐ。サンゲツは2021年に続き、半年間で2回の値上げ。同社は設立以来、今回を含め6度しか値上げしていない。異例の事態だ。安田正介社長への取材を基に真因をひもとく。
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総利益率が前年より低下
大手住宅会社
ウッドショックから続く資材価格の高騰が、大手住宅会社の業績に悪影響を及ぼしている。日経アーキテクチュアの取材と、上場している8社の住宅事業に関する決算発表資料で浮き彫りになった。
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全く転嫁できていないが4割
建設業全体
建設業全体で、資材価格の高騰分を工事価格に「全く転嫁できていない」割合は41.1%。帝国データバンク(東京都新宿区)が2022年1月に実施した調査でこうした実態が明らかになった。
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前倒し発注や在庫の確保 木材の調達先とは密に連携
木造
資材高騰と納期遅延への対応に各社が知恵を絞っている。大手・中堅の住宅会社6社の対策を表にまとめた。木造建築の経験豊富な設計事務所と工務店が、予算を大幅に上回った見積価格を減額した事例も伝える。
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「山積み」でファブの状況を把握 実施設計中の発注も検討
鉄骨造
建設資材の価格高騰や品薄が続き、ゼネコン各社は対応に追われている。特に深刻なのは鉄骨だ。品薄を理由にした工期延長は承認されにくい。早期の材料調達に向けたさまざまな取り組みが行われている。
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在庫を戦略的に確保し サプライヤーとの関係強化を
調達のプロに聞く
ロシアが生産している資源のうち、日本で建築資材の原料や製造過程のエネルギーとして活用されているのはアルミニウムや銅、レアメタル、木材、石炭、石油など。ロシアのウクライナ侵攻に伴い、これらが世界的な供給不足になるのは間違いない。
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川上段階からのコスト管理と 部材標準化の徹底を
コストマネジメントのプロに聞く
現在の資材価格の高騰は、コロナ禍が少し落ち着いて経済活動が活発になったことによるもので、半年か1年程度で落ち着くと予測していた。ところが、ロシアのウクライナ侵攻で状況が大きく変わり、資材高騰の先行きが見通せなくなった。