全3354文字
PR

建設資材の価格高騰や品薄が続き、ゼネコン各社は対応に追われている。特に深刻なのは鉄骨だ。品薄を理由にした工期延長は承認されにくい。早期の材料調達に向けたさまざまな取り組みが行われている。

 鉄骨の価格上昇や納期長期化が問題になっている。なかでも冷間プレス成形角形鋼管(BCP)は、高炉メーカーの減産や供給できるメーカーが限られることなどから恒久的に品薄状態が続くとみられている。かつては発注から納品まで8カ月程度だったが、今は14~16カ月というケースもある。

 この状況を踏まえ、ゼネコン各社はプロジェクトの早い段階から材料確保に向けて動いている。ポイントは鉄骨製作工場(鉄骨ファブ)の「山積み」を定期的に調査して把握することだ。山積みとは、どのくらい先まで、どのくらいの量の鉄骨を製作することが決まっているかという受注状況のことだ。山積みが多いファブほど納期が長くなるため、大型物件などでは発注を避ける〔図1〕。

〔図1〕鉄骨製作工場の「山積み」を踏まえて発注
〔図1〕鉄骨製作工場の「山積み」を踏まえて発注
大手ゼネコン各社が積極的に取り組んでいるのが、鉄骨製作工場の受注状況を示す「山積み」を把握する調査だ。比較的余裕のある工場に鉄骨を優先して発注する。鉄骨の場合、比較的広範囲に部材を運べるため、地方の工場に首都圏の鉄骨を発注するケースも多いという(資料:取材を基に日経アーキテクチュアが作成)
[画像のクリックで拡大表示]

全国の山積みを本部で集約

 清水建設は、取引のある全国の鉄骨ファブに関する情報を本社の購買本部に集約して発注を調整している。まず、支店ごとに取引のある鉄骨ファブの山積みを確認する。この情報を購買本部で集約。余力のある鉄骨ファブを洗い出し、各支店に情報共有する。「首都圏のプロジェクトに東北の鉄骨ファブを採用することも容易になる。取引のある鉄骨ファブの業務を平準化する効果もある」。同社東京支店調達部の松川孝志部長はこう語る。

 大林組では取引がある鉄骨ファブについて、どの高炉メーカーと取引量が多いかを確認している。「取引量が多い鉄骨ファブには構造用鋼材を優先的に回してもらえるので、納期が比較的短めになる」(大林組調達マネジメント室長の虎谷伸幸氏)

 建設現場からの距離や輸送方法などもファブの選定条件に加えている。近距離のほうが輸送時間は短く、輸送コストも下がるからだ。また船が使える場合はトラックで運ぶよりも安価になる。

 鹿島は複数の現場の鋼材などをまとめて発注する方式を試みる。「同じ発注者の計画が各地方で同時期に進んでいることがある。仕様などに共通性が高いので同じファブにまとめて発注することがある」(鹿島建築調達部の高橋広平部長)

 発注時期を早めているのも最近の傾向だ。「従来は相見積もりが必須だったが、最近は1社目のファブに打診したときに予算と納期が合えば相見積もりをせずにそのファブに発注する」(大林組の虎谷室長)。これにより、3週間から1カ月発注が早くできるという。

 発注時期に関しては設計事務所にも協力を仰いでいる。従来は細部まで設計が固まり、発注者に承認された後に資材を発注していた。最近は設計が細部まで固まる前に鋼材などの発注指示書を設計事務所に出してもらい、鉄骨ファブへの注文を先行して実施する。