ロシアのウクライナ侵攻に世界が震撼(しんかん)している。激しい戦闘は多くの建物を破壊し、無数の難民を生み出した。エネルギー価格の高騰は、脱炭素などの政策に影響を及ぼし、世界中で資材の高騰や品不足を加速させつつある。人命や文化を破壊する戦争に対して、建築の専門家は何ができるか。急速な物価上昇は、建築ビジネスにどのような変化をもたらすのか。ウクライナ危機が建築界に与える影響を、様々な角度から分析する。

ウクライナ危機 戦争と建築
日本の建築界にも届き始めた戦火の衝撃
目次
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戦時下をどう生きる 建築設計者の決断
ロシア軍の侵攻によって、ウクライナの人々は悲惨な非日常を、日常として生きなければならなくなっている。しかし、人々は嘆き悲しんでいるばかりではない。平穏な日々を待ちわびながら、それぞれができることと向かい合っている。建物の設計を通じて社会生活の舞台を整え、演出してきた建築設計者も同様だ。
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ウクライナ危機で問われる 建築家の存在意義
ロシアのウクライナ侵攻後、欧州などで活躍するスターアーキテクトが相次いでウクライナへの連帯とロシアへの非難を表明した。破壊や暴力とどのように対峙するか。建築家の存在意義が問われている。
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緊迫のチェルノブイリ原発 知られざるカバー建設の軌跡
ロシア軍が制圧したことで注目されたウクライナのチェルノブイリ原子力発電所。2007年から19年まで、石棺や原子炉を丸ごと巨大なカバーで覆う前代未聞のプロジェクトが進められた。本稿では、その過程を改めてたどる。
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大手住宅・建設会社に独自調査 資材高騰と品不足で一寸先は闇
建設会社や住宅会社はウクライナ危機が経営にもたらす影響をどう見ているのか。日経クロステック、日経コンストラクションと日経アーキテクチュアの共同調査で、企業が資材の高騰や品不足に身構える様子が浮かび上がった。
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高強度LVLの供給に赤信号 代替需要で集成材不足の恐れも
LVL(単板積層材)メーカーのキーテック(東京都江東区)とセイホク(東京都文京区)が、高強度LVLの新規受注を2022年3月中旬に停止した。原材料のダフリカカラマツ単板をロシアが輸出禁止にしたためだ。
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戦争が海外事業に落とす影 レピュテーションリスクに要警戒
ウクライナ危機の影響で、ロシアなどで事業を展開する日系企業に影響が出ている。地政学的リスクの高まりは、海外事業を成長の柱に据える建設会社や不動産会社などにとって、他人事ではない。
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エネルギー危機で省エネ加速 日本はついていけるのか
天然ガスや石油、石炭といった化石燃料の多くをロシアに依存する欧州。ウクライナ危機を受けて、調達先の変更やエネルギー政策の大幅な見直しが始まった。住宅・建築物の脱炭素に向けた政策の針路を探る。
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消えゆく戦争遺跡 建築に何ができるか
広島市内で最大規模の被爆建物「旧広島陸軍被服支廠(ししょう)」をご存じだろうか。軍服や軍帽などの製造や保管のために、旧陸軍が建設した軍需工場だ。米軍による1945年8月6日の原子爆弾投下でも倒壊を免れ、今なお工場施設のうち13年に竣工した倉庫4棟が現存している。