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 ロシア軍の侵攻によって、ウクライナの人々は悲惨な非日常を、日常として生きなければならなくなっている。しかし、人々は嘆き悲しんでいるばかりではない。平穏な日々を待ちわびながら、それぞれができることと向かい合っている。建物の設計を通じて社会生活の舞台を整え、演出してきた建築設計者も同様だ。

 首都キーウ(キエフ)を拠点に、商業施設からオフィス、個人住宅まで幅広く手掛ける建築設計事務所のbalbek bureau(バルベックビューロー)(以下、バルベック)もその1つ。国内外での受賞も多い実力派だ。創設者のスラバ・バルベック氏は戦争が始まってすぐ、自ら設計したカフェを拠点に炊き出しにいそしんだ。キーウの領土防衛隊(民兵部隊)や医療スタッフと患者、高齢者などに1日当たり最大1万2000食を提供する取り組みだ〔写真1〕。

〔写真1〕避難民向けのプロジェクトを始動させる
攻撃を受けた建物の前に立つbalbek bureauの創設者、スラバ・バルベック氏。国内外で活躍する設計者だ(写真:balbek bureau)
攻撃を受けた建物の前に立つbalbek bureauの創設者、スラバ・バルベック氏。国内外で活躍する設計者だ(写真:balbek bureau)
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モジュール建築を組み合わせて街区をつくる「RE:UKRAINE」のイメージ。世界の仮設住宅などを分析したうえで提案した。モジュールは木造で、サイズは幅3.4m、奥行き6.75m、高さ2.95m。費用は1m<sup>2</sup>当たり350~550ドルと見積もった(資料:balbek bureau)
モジュール建築を組み合わせて街区をつくる「RE:UKRAINE」のイメージ。世界の仮設住宅などを分析したうえで提案した。モジュールは木造で、サイズは幅3.4m、奥行き6.75m、高さ2.95m。費用は1m2当たり350~550ドルと見積もった(資料:balbek bureau)
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(写真:balbek bureau)
(写真:balbek bureau)
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病院のスタッフや患者などに無償で食事を届けるボランティア活動。バルベック氏が設計したカフェを拠点に、1日当たり最大1万2000食を提供する取り組みだ(写真:balbek bureau)
病院のスタッフや患者などに無償で食事を届けるボランティア活動。バルベック氏が設計したカフェを拠点に、1日当たり最大1万2000食を提供する取り組みだ(写真:balbek bureau)
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