ロシアのウクライナ侵攻後、欧州などで活躍するスターアーキテクトが相次いでウクライナへの連帯とロシアへの非難を表明した。破壊や暴力とどのように対峙するか。建築家の存在意義が問われている。
今や戦地になった通りを、我々はつい最近まで歩いていた──。オランダ・ロッテルダムを拠点に世界で活躍する建築設計事務所のMVRDVは2022年2月28日、こんな書き出しの声明文を発表した。ロシアがウクライナに侵攻してから4日後のことだ〔図1〕。
欧州に拠点を置くUIA(国際建築家連合)やACE(欧州建築家評議会)、こうした組織に加盟する各国の建築関連団体も声明を発表し、難民や学生の支援、ウクライナから逃れてきた設計者への仕事のあっせんなどに取り組む
2022年2月28日 MVRDV
ウクライナの国旗の色に染まった事務所の写真を掲げた
3月1日 BIG
ウェブサイトでロシアやロシア政府との関わりがないことを強調
3月1日 UNStudio
スタッフにウクライナ人とロシア人の両方がいる
3月2日 David Chipperfield Architects
インスタグラムにメッセージと写真を投稿し、プーチン大統領とロシア政府の行動を非難
3月2日 Snøhetta
インスタグラムにシンプルなメッセージを投稿
3月3日 Herzog & de Meuron
自社のウェブサイト上に声明を掲載
3月5日 Foster + Partners
ツイッターに声明文を投稿した
MVRDVはウクライナへの連帯と戦争への反対を表明。ウクライナで抱えているプロジェクトが「残虐な行為」によって保留になったことと、ロシアでのプロジェクトを当面中断することも明らかにした。
広報責任者を務めるアイリーン・スタート氏によると、同社はウクライナの首都キーウ(キエフ)で個人住宅と都市マスタープランの計2件を手掛けている。ロシアではモスクワ中心部の「RED7」と呼ぶ複合施設など、計5件が進行中だった。
MVRDVの声明を皮切りに、欧州の名だたる建築設計事務所がウクライナ侵攻への反対意見やロシアでのプロジェクト中断をSNS(交流サイト)などで発表し始めた。
スイスのHerzog & de Meuron(ヘルツォーク アンド ド・ムーロン)や英Foster + Partners(フォスター・アンド・パートナーズ)、英David Chipperfield Architects(デイビッド・チッパーフィールド・アーキテクツ)、ノルウェーのSnøhetta(スノヘッタ)など、そうそうたる顔ぶれだ。デンマークを拠点とするBIG(Bjarke Ingels Group)(ビャルケ・インゲルス・グループ)は3月1日、「我々はロシアやロシア政府に関係するプロジェクトに関わっていない」としたうえで、「ウクライナの主権、民主主義、人権、領土保全に対する支援は揺るぎない」と表明した。