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ウクライナ危機の影響で、ロシアなどで事業を展開する日系企業に影響が出ている。地政学的リスクの高まりは、海外事業を成長の柱に据える建設会社や不動産会社などにとって、他人事ではない。

 「ロシアのプロジェクトは実質中断している」。日建設計の大松敦社長は2022年3月22日の経営ビジョン説明会で、ウクライナ危機の影響を明かした。同社はロシア最大手銀行のズベルバンクが進める「ズベルバンクシティー・コンプレックス」など国際コンペで勝ち取った3つの大規模案件をロシアで手掛けている〔図1〕。

〔図1〕日建設計が国際コンペで勝ち取ったロシアのビッグプロジェクト
主に出張ベースで海外の顧客に対応してきたが、コロナ禍で難しくなった。現地に所員を駐在させる必要性を感じていた矢先にウクライナ危機が起こった。「人を駐在させるとなれば、今回のようにプロジェクトを簡単に止めるわけにはいかなくなる」(大松敦社長)(資料:日建設計、写真:日経アーキテクチュア)
主に出張ベースで海外の顧客に対応してきたが、コロナ禍で難しくなった。現地に所員を駐在させる必要性を感じていた矢先にウクライナ危機が起こった。「人を駐在させるとなれば、今回のようにプロジェクトを簡単に止めるわけにはいかなくなる」(大松敦社長)(資料:日建設計、写真:日経アーキテクチュア)
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2019年

ズベルバンクシティー
ズベルバンクシティー
ロシア最大手銀行の案件(資料:日建設計)
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リジスキー貨物ヤード跡地再開発
リジスキー貨物ヤード跡地再開発
70万m2の大規模複合開発(資料:日建設計)
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2020年

ガスプロムネフチ本社ビル
ガスプロムネフチ本社ビル
ロシアの石油会社のオフィスを水辺に(資料:日建設計)
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 大松社長は、3つの案件が「いずれも節目を越えたところで、今後の進め方を協議するタイミングだった」と説明する。業績への影響については、「プロジェクトのフェーズを細かく区切り、設計料を出来高に応じて受け取ることにしていたため、大きな損失は出ていない」(大松社長)。過去の海外案件での経験を踏まえて講じておいた対策が役立った。

 現在は顧客との協議を進めている。「設計料の前払い金や中断時の取り扱いなど、新たなリスクヘッジ条項を提案している。ただし、積極的にプロジェクトを続けるためというよりは、速やかに一旦中断することを想定し、こちらの言い分をはっきり伝えながら協議している」(大松社長)