これまで1度も交換されなかったカプセルが、初めて建物から解き放たれた。メタボリズム(新陳代謝)の代表といわれる中銀カプセルタワービルが解体中だ。カプセルを巡り、設計事務所が再建に使える設計データを販売するなど、新たな局面を迎えている。
白い防音パネルに囲われた中銀カプセルタワービル(東京都中央区)の解体が4月12日、ついに始まった。しばらくして現場を訪れると、クレーンで吊り上げられたカプセルが、パネルの奥から姿を現した。
建物は1972年に竣工した。設計は黒川紀章(1934~2007年)。特徴的な鉄骨製カプセルは幅2.5m、奥行き4m、高さ2.5mの大きさで、その中に最小限の居住機能が収まっていた〔写真1~3〕。11階建てと13階建てのタワーに取り付けたカプセルユニットは合計140個に上る。
世界的に見ても独創的なこの建物は、時代が生んだ作品といえる。
黒川は1959年、菊竹清訓(1928~2011年)らと組み、社会や人口の変化に合わせて有機的に成長する都市や建築を提案する運動を組織。生命の原理を基に、グループの名称を「メタボリズム」と名付けた。
黒川はメタボリズム運動の中で、複数の拠点を移動しながら暮らす人物像として「ホモ・モーベンス」を提唱。住まいのあるべき姿は移設や再利用が可能なカプセルだと宣言し、中銀カプセルタワービルを都心のセカンドハウスとして提案した。