これから挑戦すべき「役に立つ資格」は何か。日経アーキテクチュアと日経クロステックが実施したアンケート調査では、6割以上が「役に立った」と回答した資格が複数あることが判明した。最新のマルチライセンス戦略を探る。
調査において「実務に役立った」という評価が高かったのは、1級建築士や1級施工管理技士といった職能を代表する資格だ。さらに深掘りし、これら以外を抜き出すと、保有者数は多くないものの、資格取得後に役立ったと高く評価されているものが見えてきた〔図1〕。
Q 建築系資格はどのように役立ちましたか?
- 1級建築士は役職の昇格要件なのでそのメリットは大きい。1級、構造1級とも内容が実務に直結しており、勉強するだけでも有益だった(30代男性、設計事務所)
- 1級建築士があることでヘッドハンティングされて収入が増えた(60歳以上男性、設計事務所)
- 設備設計1級建築士は入札の参加要件にあることが多い(50代男性、総合建設会社)
- 静岡県耐震診断補強相談士を取得し、耐震リフォームの相談をもらいやすくなった(60歳以上男性、設計事務所)
- 建築基準適合判定者の取得では、勉強の段階でかなりの知識を得ることができた(60歳以上男性、プラントメーカー)
- 国内でまだ例の少ないLEED/WELLの資格取得により、国内外のサステナビリティーあるいはウェルネスに関連する業界とのネットワークを構築できた(30代女性、設計事務所)
Q 建築系資格についてご意見を聞かせてください
- 建築士資格は取得に心身・時間・金銭の負担が大きいのに、社会的評価や給与に反映されにくい。せめて資格勉強のための金銭的サポートだけでも充実させてほしい(40代男性、総合建設会社)
- 一生使えるので建築士を取って損はない。実務では資格より知識や経験が勝るが、資格がないと何もできない業界でもある(50代男性、保険会社)
- 資格試験の制度は頻繁に変えない方がよい。1級建築士試験はそれで混乱させられた(30代男性、設計事務所)
- BIM/CIM普及促進のためにも、建築士の製図試験ではCADを認めることも必要ではないか(40代男性、住宅メーカー・工務店)
- 改修工事をする際、給排水・電気工事を知っていると、役に立つ(60歳以上男性、総合建設会社)
- 耐震診断などの資格が都道府県で統一されていない(60歳以上男性、無職)
- 資格取得後の更新に関する労力や費用がやや負担に感じる(40代女性、コンサルタント)
それが建築基準適合判定資格者、建築設備士の2資格。評価は1級建築士や1級建築施工管理技士と同等の6割超えだった。5割台にはCASBEE(建築環境総合性能評価システム)評価員も食い込み、設備関連または評価関連の資格が目立った。
住宅関係を中心に保有率が高かったのが宅地建物取引士(宅建士)だ。調査では「管理職となると建築系知識よりも権利関係のトラブルが増えるため、宅建資格の知識の重要性を実感するようになった。建築士と宅建の両方を取得することの価値はもっと認知されるべきだ」(40代男性、住宅会社)との声もあった。
社内外から「評価が高い」と実感している保有者が多かったのは技術士だ。「公共工事の設計委託を受注する際に有効。試験は難しいが信頼度は高い」(60代以上男性、コンサルタント)との声があった。
逆にメリットが「特になかった」という保有者が多かった資格に、VEリーダー、管理業務主任者、インテリアコーディネーターが挙がった。