施工現場×デジタル
国立競技場の施工現場経験 IT資格取って「DX社内留学」
大成建設 東京支店 新宿西口再開発計画技術協力業務 副所長
池田 拓己氏(1983年生まれ)

プロフィル 2006年東京工業大学卒業。同年大成建設入社。建築現場を歴任。20年社長室情報企画部。21年東京支店建築現場(現職)
資格など
- 1級建築士
- 1級建築施工管理技士
- 基本情報技術者
大成建設が威信を懸けて取り組んだ、国立競技場の建て替え工事。その施工現場に池田拓己氏はいた。現場育ちの池田氏は競技場完成後の2020年から2年間、社内でも異色のキャリアを歩むことになった。本社の社長室情報企画部デジタル推進室に、課長として異動した。
会社が池田氏に期待したのは、現場発のアイデアで施工業務のデジタル化を推進することだ。いわゆる、「DX(デジタルトランスフォーメーション)人材」としての振る舞いである。
異動した池田氏はまず、情報システムについて最低限の知識を身に付けようと、基本情報技術者を目指すと決めた。覚えることをノートにびっしりと書き込んで試験に臨み、合格した。
現場とデジタル推進のブリッジ
情報技術を活用した戦略立案といった資格の学びを生かしながら、自分が現場で困っていたことや、こうすればもっと便利になるのにと思ったことをデジタルの力で変える企画を練った。例えば、依然として紙が多い施工現場で、図面やメモ書きを電子化する。それにはBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)との連携が欠かせない。
思い付いたら即実行と、現場で小さく始めて検証する日々を過ごした。IT業界で言う「PoC(コンセプトの実証)」を現場でコツコツと実践した。
建設業界とIT業界の言葉はどちらも専門的で、現場の人たちやシステム開発担当者となかなか話が通じない。池田氏はiPadでスケッチを描き、絵で伝えることを心掛けた〔図3〕。こうすると、早く正確に伝えられる。
絵心がある池田氏は、日本建設業連合会で「スケッチコミュニケーション」の達人として紹介された。2年間の「社内留学」を終え、池田氏は21年に再び、大規模現場に戻った。
基本情報技術者とは
独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が実施している、ITエンジニアの登竜門ともいわれる国家試験。ITの基本的な知識や技能を持ち、実践的な活用能力を身に付けたことを証明する。「情報処理の促進に関する法律」に基づき、経済産業省が知識と技能が一定以上の水準であることを認定するもの