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資格の取得はゴールではなく、実務の知識やキャリアを豊かにするためのスタートとなる。設計や施工現場、技術開発など様々な職場で、実際に資格を生かして活躍するユニークな資格ホルダーたちを紹介する。

 社会人になってから合格した資格の数、20以上。そのうち建築系など実務向けの資格は17で、中には1級建築士も含まれる。スーパー資格ホルダーの日隈裕子氏に、建築関連でオススメの資格を聞いた〔写真1〕。

〔写真1〕働きながら数々の資格試験に合格
〔写真1〕働きながら数々の資格試験に合格
建築以外の資格も複数取得した。メンタルヘルス・マネジメント検定は、将来管理職になることを見越して受けた(写真:日経アーキテクチュア)
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 スーパー資格ホルダー 
日隈 裕子氏(1989年生まれ)

 プロフィル  2013年関西学院大学総合政策学部卒業。同年不動産関連企業に就職。賃貸住宅の設計を担当した経験がある

 日隈氏は関西学院大学の総合政策学部の出身だ。文理融合の学部で、街づくりなどを学び、2013年、不動産関連の企業に建築職として入社した。

 現在は、集合住宅の建て替えのマネジメントを担当し、発注者の立場で仕事をしている。

 なぜ日隈氏はこんなにたくさんの資格に挑戦したのか。転機になったのは1級建築士試験だ。発注者として働く中で、工学部出身者と比べて実力不足を感じたことや、設計事務所などと対等に話をするには知識を深める必要があることを実感して一念発起。受験を決意した。「キャリアも子どもを持つことも諦めたくない。自分の市場価値を高めたい」。そんな思いもあった。

 製図試験は3回目で合格。「資格学校に何百万円も費やし、プライベートの時間も犠牲にした」と、日隈氏は回顧する。合格したのに悔しさを抱き、効率の良い資格の取得を目指し始めた。

実務知識を深掘り

 その後、日隈氏は実務に生きる資格から勉強し始めた。「1級建築士では建築界で必要な知識を横断的に学べたが、実務的な知識が不足していると感じた」(日隈氏)。不動産では宅地建物取引士、改修工事はマンション維持修繕技術者といった具合に、勉強する資格を選んだ。

 こうして熱意を燃やし続けた結果、18年度には、宅地建物取引士を含む6つの資格に合格した〔図1〕。

〔図1〕2018年度は7つの資格に挑戦
〔図1〕2018年度は7つの資格に挑戦
2018年度の学習スケジュール。このとき、マンション管理士以外は合格した。「社会人の資格勉強で1番のネックは、時間の制約がある中で勉強しなければならないこと」と日隈氏は話す。資格の勉強をすればするほど、知っている分野が増えていく。そのため、過去に他の資格で学んだ分野は傾向だけ確認して済ませるなど、割り切って勉強する(資料:日隈氏の資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
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 準備ではまず出題範囲や必要とする知識の関連性を意識し、複数の資格を効率的に取得するためのスケジュールを立てた。例えば、宅地建物取引士の勉強をすれば、民法の知識が身に付く。宅地建物取引士と賃貸不動産経営管理士、マンション管理士、管理業務主任者は出題範囲や分野が近いので、短期間に続けて受験する、といった具合だ。

 日隈氏は自身の経験を踏まえ、1級建築士の他に持っておくとよい資格について、「プロジェクト全体を把握できるような資格が付加価値を上げると考えている」と話す。

 発注者の視点から特に薦めるのは、認定コンストラクション・マネジャーだ〔図2〕。プロジェクトの企画段階から施工段階まで、フェーズごとに何をすればよいかを学べる。2次試験では、架空のプロジェクトの問題点や解決方法を問う試験があり、実務で経験するようなことを疑似体験できたと言う。設計者の視点では、施工段階のリスクや発注方式などを総合的に考える際に役立つ。

〔図2〕認定コンストラクション・マネジャーが1番オススメ
〔図2〕認定コンストラクション・マネジャーが1番オススメ
日隈氏によるオススメ資格。勉強の習慣を身に付けたい人には、3級ファイナンシャル・プランニング技能士などを薦めた。勉強のリズムを身に付けることや成功体験が、新たな資格取得へのモチベーションにつながる(資料:取材を基に日経アーキテクチュアが作成)
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 今後目指す資格の1つは、ITパスポート試験だ。「建築業界はIT分野で後れを取っていると感じる。まずは基本的な資格から取りたい」と、日隈氏は語った。