本連載では、自然光を利用したここ数年の事例について、デザインと納まりの要点を設計者に聞く。内藤廣氏が建築そのものの価値を意識した「紀尾井清堂」では、コンクリートの立体に天窓から光を取り込む。

- トップライトは建築家の憧れだが、デビュー以来かなり慎重に付き合ってきた
- トップライトを設ける際は、雨漏りや結露が発生しない万全の対策を常に講じている
- 紀尾井清堂ではサッシを見せず、ガラスの存在を感じさせないトップライトにこだわった
「紀尾井清堂」(2020年)はトップライトからの日差しが印象的ですが、内藤さんの過去の設計では、トップライトを使った例は少ないですね。
建築家は誰でもトップライトに憧れるものです。ただ、とても難しいアイテムですよね。まず、雨漏りや結露といった問題をクリアしなければなりません。適切なコストをかけることも必要だし、クライアントの理解も欠かせません。そのため、私の場合、デビュー以来、かなり慎重にやってきたところがあります。
例えば、「十日町情報館」(1999年)では、スリット状に並ぶトップライトを設け、図書館を設計しました〔写真1〕。クライアントからは、「雪国の十日町でトップライトはあり得ない」と反対されましたが、あの空間はトップライトがないと成り立ちません。
そこで、「絶対に漏らさない」という決意で設計に挑みました。トップライトまわりのディテールだけでなく、空気を回すファンを取り入れることで結露を防ぐなど、いくつもの工夫を施しました。いまだに一滴も漏れていないはずです。