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本連載では、自然光を利用したここ数年の事例について、デザインと納まりの要点を設計者に聞く。内藤廣氏が建築そのものの価値を意識した「紀尾井清堂」では、コンクリートの立体に天窓から光を取り込む。

ないとう・ひろし:1950年生まれ。早稲田大学大学院修士課程修了後、フェルナンド・イゲーラス建築設計事務所、菊竹清訓建築設計事務所を経て、81年内藤廣建築設計事務所を設立。2001~11年東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻教授、東京大学副学長を歴任(写真:山田 愼二)
ないとう・ひろし:1950年生まれ。早稲田大学大学院修士課程修了後、フェルナンド・イゲーラス建築設計事務所、菊竹清訓建築設計事務所を経て、81年内藤廣建築設計事務所を設立。2001~11年東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻教授、東京大学副学長を歴任(写真:山田 愼二)
東京・紀尾井町の交差点に面した、緩やかな高低差がある敷地に立つ。一辺15mのコンクリートの立方体をガラスのスクリーンで包んでいる(写真:吉田 誠)
東京・紀尾井町の交差点に面した、緩やかな高低差がある敷地に立つ。一辺15mのコンクリートの立方体をガラスのスクリーンで包んでいる(写真:吉田 誠)
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自然光利用のポイント
  • トップライトは建築家の憧れだが、デビュー以来かなり慎重に付き合ってきた
  • トップライトを設ける際は、雨漏りや結露が発生しない万全の対策を常に講じている
  • 紀尾井清堂ではサッシを見せず、ガラスの存在を感じさせないトップライトにこだわった

「紀尾井清堂」(2020年)はトップライトからの日差しが印象的ですが、内藤さんの過去の設計では、トップライトを使った例は少ないですね。

 建築家は誰でもトップライトに憧れるものです。ただ、とても難しいアイテムですよね。まず、雨漏りや結露といった問題をクリアしなければなりません。適切なコストをかけることも必要だし、クライアントの理解も欠かせません。そのため、私の場合、デビュー以来、かなり慎重にやってきたところがあります。

 例えば、「十日町情報館」(1999年)では、スリット状に並ぶトップライトを設け、図書館を設計しました〔写真1〕。クライアントからは、「雪国の十日町でトップライトはあり得ない」と反対されましたが、あの空間はトップライトがないと成り立ちません。

〔写真1〕三角形に突き出したトップライトから採光する「十日町情報館」
(写真:内藤廣建築設計事務所)
(写真:内藤廣建築設計事務所)
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(写真:内藤廣建築設計事務所)
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トップライトまわりの納まりだけでなく、空気を送るファンを設けるなど様々な工夫を施して、雪国特有の「すが漏れ」や結露が生じないようにした

 そこで、「絶対に漏らさない」という決意で設計に挑みました。トップライトまわりのディテールだけでなく、空気を回すファンを取り入れることで結露を防ぐなど、いくつもの工夫を施しました。いまだに一滴も漏れていないはずです。